社員・顧客と価値を生み出す実践手法
はじめに|共創が求められる背景
近年、企業に求められているのは「創造力」だけではなく「共創力」です。市場の変化が早まり、顧客ニーズが多様化する中で、ひとつの部署や限られたチームだけで画期的なアイデアを生み出すことが難しくなってきました。
そこで注目されるのが「共創ワークショップ」。社員や顧客、外部の協力者などを巻き込み、対話と協働を通じて新しい価値を生み出す場の設計です。本記事では、共創の場をより実践的に活用するためのアイデア出し手法を10個紹介します。
共創ワークショップ設計の基本視点
共創型ワークショップの成果は「事前の設計」に大きく左右されます。以下の3つの視点を押さえておくことが重要です。
- 目的の明確化:アイデア創出か、課題発見か、戦略構想かによって設計が変わる
- 対象者の選定:社員、顧客、パートナー、学生など、誰と共創するかを明確に
- プロセス設計:発散→収束→可視化という流れを意識した構成を
共創を活かすアイデア出しワークショップ10選
- 1. ブレインライティング: 個々が無言でアイデアを紙やツールに書き出し、それを他者が読み取って発展させる形式。発言の得意・不得意に左右されず、多様な視点を取り込めるのが魅力。特に静かな環境でじっくり発想を深めたい場面に適しています。
- 2. KJ法: 情報や意見をカードに書き出し、意味や関係性を見つけながらグループ化していく手法。複雑な情報を整理・構造化するのに向いており、潜在的なつながりやテーマの発見に役立ちます。
- 3. 未来新聞: 理想の未来を架空の新聞記事として描くことで、ワクワクする未来像を可視化します。未来起点でアイデアを出す「バックキャスティング」思考が特徴で、新規事業やビジョン共有に有効です。
- 4. オズボーンのチェックリスト: 9つの発想視点(例:転用・結合・代用など)を用いて、既存アイデアを深掘り・広げる思考補助ツール。枯渇した議論を活性化し、思考の幅を意図的に広げたい時に便利です。
- 5. インサイトスケッチ: 顧客の行動や感情を図やイラストで可視化することで、論理だけでは見えない“気づき”を促します。共感を起点としたアイデアづくりに向いており、BtoC領域で特に有効です。
- 6. ストーリーボード法: サービスや製品の利用シーンを時系列で絵や図にし、課題やニーズを見つけていく手法。顧客体験を“視覚的に理解する”ことで、チーム内の認識共有と課題の発見が促されます。
- 7. アイデアスピードラウンド: 短時間で一気に数多くのアイデアを出すラピッドブレスト型のワーク。評価は後回しにして量を重視することで、思わぬ切り口が出やすくなります。発散フェーズに最適です。
- 8. ヒーロージャーニー: 顧客や自社を主人公に見立て、「挑戦・障害・成長」のプロセスを物語にして描きます。感情やモチベーションを伴った深い共創アイデアを引き出せるストーリー発想法です。
- 9. デザインスプリント・ダイジェスト: Google発の5日間プログラムを1日版に凝縮した高速課題解決法。課題明確化→発想→選定→検証までを短時間で体験し、スピード重視のチーム開発や検証に適しています。
- 10. ChatGPT共創法: AIを共創の“参加者”として活用。質問や入力に対して即座に提案が返ってくるため、異なる視点の刺激が得られます。人とAIのハイブリッドで、発想の幅を飛躍的に拡げられます。
実施時の注意点と成功のコツ
- 出てきたアイデアを必ず可視化:発言だけで終わらせず、カードや模造紙などで残す
- 上下関係や部署を越える構成:自由な意見交換を促すため、立場を意識させない座組みが重要
- 記録と振り返りの仕組み化:実施後に「どうだったか?」を共有・蓄積して改善サイクルを回す
導入事例|企業の活用と成果
● IT企業A社:若手社員を中心とした未来新聞づくりを行い、次期プロジェクトのテーマを創出。
● 教育関連B社:保護者と教師が参加するストーリーボード法で、サービス改善に成功。
● メーカーC社:ChatGPTを導入し、技術者・営業・学生が混成で商品コンセプトを共同発案。
まとめ|共創ワークショップがもたらす変化
共創ワークショップは単なる手法ではなく、「組織の対話文化を育て、創造力を開く仕組み」です。社員の意識が変わり、顧客と企業の関係性も深化する――そんな変化を起こす鍵がこの“共創の場”にあります。
まずは1テーマ・1時間でも構いません。目的と相手を明確にした上で、小さく始めて継続する。それが、未来の価値創造につながる第一歩です。