価値共創マーケティング 実践ガイド
第10章 成果の測り方:KPIと学習サイクルで育てる
第9章では、社内を動かすための「仕組み」(見える化/1枚カード/小さなサイクル)を整えました。
でも、ここで次の壁が出ます。
「で、結局どれくらい良くなったの?」——この問いに答えられないと、続きません。
この章では、売上だけに頼らず、共創の前進を見える化するKPIと、学習が積み上がる回し方を、初めての方にもわかるように丁寧に説明します。
最初に:KPIは「評価」ではなく「前に進むための計器」
KPI(重要業績評価指標)という言葉は、少し固く聞こえます。
そして、こう思われがちです。
「KPI=管理される」「KPI=詰められる」「KPI=数字で縛られる」。
でも、この本で扱うKPIは違います。
ここでのKPIは、誰かを評価するためではなく、前に進むための“計器”です。
KPI(やさしい定義)
KPIとは、取り組みが「良い方向に進んでいるか」を確認するための目印です。
車でいえばスピードメーターや燃料計。迷子にならないために使います。
この章の約束
・難しい言葉はできるだけ使いません。
・「数字がないと無理」ではなく、現場で拾える指標も扱います。
・完璧な設計より、回して育てることを重視します。
売上だけでは危ない理由:共創の成果は“途中”に出る
もちろん、最終的に売上は大事です。
でも、売上だけを見ていると、共創は続きにくくなります。
なぜかというと、共創の成果は、まず途中の変化として出るからです。
たとえば——
ポイント
売上は“最後に出る結果”です。
その前に起きる途中の変化をつかめると、改善が続きます。
KPI設計の基本:3つの層(行動・中間・結果)
KPIを作るときは、いきなり「結果(売上)」から作らないほうがうまくいきます。
まずは、3つの層に分けます。
① 行動KPI(やったか)
- 見える化カードを何枚作ったか
- 2週間サイクルを回した回数
- 改善を1つ実装したか
まずは「動いた」ことを確認する指標。
② 中間KPI(変わったか)
- 迷いが減ったか
- 説明が短くなったか
- 不安が減ったか
共創が効き始める“途中の変化”。
③ 結果KPI(成果)
- 購入率/成約率
- 客単価/継続率
- 売上/利益
最後に見る「結果」。
作り方の順番(おすすめ)
①行動KPI → ②中間KPI → ③結果KPI の順で作ります。
こうすると「何をすれば良いか」が明確になり、続きます。
共創に効くKPI例:迷い/納得/不安の減り方を測る
価値共創マーケティングの中心は、「お客さまの迷い・不安」をほどき、「納得」を増やすことでした。
ならば、そこを測れば良い。ここがシンプルな発想です。
中間KPI(おすすめ例)
迷いが減ったか
・比較検討の問い合わせが減る/変わる
・「結局どれがいい?」が減る
・説明後に決めるまでの時間が短くなる
納得が増えたか
・「それなら安心です」が増える
・同じ説明でも反応が良くなる
・紹介や口コミが増える(小さくても兆し)
不安が減ったか
・返品・キャンセル理由が変わる/減る
・よくある質問が減る/短くなる
・クレームの“根っこ”が減る
説明が短くなったか(営業・現場に効く)
・接客の平均時間が短くなる
・値引き交渉が減る/理由が変わる
・新人でも説明が通る(標準化が進む)
ポイント
“売上”だけを追うと、改善の手が見えなくなります。
でも「迷いが減った」「説明が短くなった」は、改善の方向が見える。
だから、共創は続きます。
測り方:数字がなくても拾える「現場の証拠」
「数字が取れません」という相談は多いです。
大丈夫です。最初から完璧な数値管理は必要ありません。
まずは、現場で拾える“証拠”を集めます。
これも立派なKPIの材料です。
会話の証拠
- よく出る質問の変化
- 「迷いの言葉」が減る
- 「安心の言葉」が増える
会話は“迷い→納得”が見えます。
行動の証拠
- 離脱が減る(Webなら滞在やクリック)
- 比較ページを見る前に決まる
- 問い合わせの内容が具体的になる
行動は“迷いの減り方”が見えます。
記録のコツ(1分でできる)
1)「変化があった一言」をメモする(例:それなら安心)
2)どの場面で出たかを書く(例:説明後、比較の話が消えた)
3)次に何を試すかを1つだけ書く(例:冒頭の順番を変える)
——この3点が揃うと、学習が積み上がります。
学習サイクル:2週間で回す“改善の型”
KPIは「測る」だけだと意味がありません。
大事なのは、測った結果を使って次の一歩につなげることです。
学習サイクル(やさしい定義)
学習サイクルとは、結果を見て終わりにせず、学びを次の改善に変える流れです。
「測る → 学ぶ → 次を試す」を短い周期で回します。
仮説を1つだけ決める
例:「迷いは“選び方がわからない”が原因。目安を最初に出す」
改善を1つだけ入れる
例:Web冒頭の順番/店頭POP/説明トークの順番を変える
KPIを見る(数字+証拠)
例:会話の変化、よくある質問、離脱、問い合わせ内容を確認
学びを1行で残す
例:「目安を先に出すと“比較の質問”が減り、決める人が増えた」
次の一歩をまた1つ決める
改善を増やしすぎず、次も“1つ”に絞る
ポイント
共創で強いのは「一発の大改善」ではなく、小さな改善の積み上げです。
だから、KPIは“成績表”ではなく、“次の改善を決める道具”として使います。
KPIが形骸化しないコツ:見方・会議・責任の置き方
KPIは、やり方を間違えると「報告資料」になってしまいます。
そうなると、現場は疲れ、共創は止まります。
形骸化を防ぐコツを、3つに絞ってお伝えします。
最小セット(これだけで回ります)
・行動KPI:2週間サイクルを回した回数
・中間KPI:迷いが減ったサイン(会話/離脱/質問の変化)
・結果KPI:購入率 or 成約率(取れる範囲で)
——この3つが揃えば、改善は前へ進みます。
この本のまとめ:10章で手に入る「回る型」
第1章から第10章まで、共創マーケティングを「現場で回る形」に落とすために、順番に積み上げてきました。
最後に、全体をもう一度、短く整理します。
価値共創マーケティング:回る型(全体像)
見る(理解する)
アンケートだけに頼らず、場づくり・観察・対話で“本音”を拾う。
言語化する(仮説を立てる)
刺さる仮説に落とし、企画へつなげる。
形にする(体験を整える)
伝え方・売り方を“迷い→納得”の順で設計する。
社内で回す(継続する)
1枚カード+小さなサイクルで、部署を超えて進める。
学習で育てる(測って改善する)
KPIで前進を見える化し、小さな改善を積み上げる。
最後に
価値共創は、特別な会社だけのものではありません。
大事なのは、完璧な計画より、現場の事実から小さく試して学ぶこと。
この「回る型」ができると、価格ではなく納得と共感で選ばれる状態が育っていきます。
要点まとめ(3行)
- KPIは評価ではなく、取り組みが前に進むための計器として使う。
- 売上の前に出る「迷い・不安・納得」の変化を中間KPIでつかむと継続できる。
- 2週間で「仮説→改善→KPI→学び→次」を回し、小さな改善を積み上げる。
次の一歩
現場に合う“回る型”を、短時間で整理します
章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。
※ご相談後に無理な営業は行いません。