価値共創マーケティング 実践ガイド
第6章 共創セッションの進め方:再現できる運営設計
第5章で、観察の事実から刺さる仮説(インサイト)を言葉にしました。
ここからが「共創」の出番です。
この章では、初めての方でも安心して回せるように、共創セッションを再現できる“運営の型”として、
目的設定から当日の進行、記録、次の一手まで、順を追って丁寧に説明します。
最初に:共創セッションは「会議」ではなく「確かめる場」
「共創セッション」と聞くと、立派なワークショップを想像しがちです。
でも実際に必要なのは、派手な演出ではありません。
共創セッションのやさしい定義
共創セッションとは、仮説(インサイト)を“現場の言葉”で確かめながら、次の一手を一緒に整える場です。
つまり「議論して決める会議」ではなく、試しながら確かめる場です。
会議は、正解を早く決めようとします。
一方、共創セッションは、まだ確かめきれていない部分を安全に出して、ズレを直すための場です。
だからこそ、運営設計(場のつくり方)が重要になります。
初心者の安心ポイント
いきなり「新商品を決める」必要はありません。
まずは仮説を確かめるだけで十分です。成果は“小さくても”確実に積み上がります。
共創セッションの目的は3つ(何を持ち帰る?)
セッションが失敗する原因の多くは、目的がぼんやりしていることです。
そこで、目的は次の3つのどれか(または組み合わせ)に絞ります。
① 仮説の確認
- インサイトは合っている?
- どこがズレている?
- 言葉は刺さる?
まずはこれが基本です。
② 体験の具体化
- どんな場面で使う?
- 何が不安?
- 何が決め手?
第4章の観察を深めます。
③ 次の一手の整理
- 何を変える?
- 何を足す?
- 何をやめる?
改善案を“実行できる形”に。
おすすめの順番
初回は、①仮説の確認に寄せるのがおすすめです。
目的が絞れると、参加者も安心して話せます。
設計の基本:参加者・人数・時間・場所の決め方
共創セッションは、内容より先に「箱」を決めると成功しやすくなります。
ここでは、初心者の方が迷いやすいポイントを“決め方”として整理します。
参加者(誰を呼ぶ?)
- 生活者:2〜4名(最初は少人数が安心)
- 企業側:2〜3名(多すぎない)
- 進行役:1名(話題を整える係)
企業側が多いと“面接”っぽくなるので注意。
時間・場所(どう設定する?)
- 時間:初回は90分がちょうど良い
- 場所:落ち着く場所(会議室でもOKだが“圧”は減らす)
- 配置:真正面より斜め、円卓や横並びが安心
オンラインは便利ですが、初回は対面の方が“空気”が作りやすいです。
最初のおすすめ構成(迷ったらこれ)
生活者2名+企業2名+進行1名(計5名)/90分/飲み物あり
これだけで“話しやすさ”がかなり変わります。
本音が出る進行:90分の標準タイムテーブル
共創セッションは、進行がないと「雑談だけで終わる」か「質問攻めになる」かのどちらかになりがちです。
そこで、初心者でも回しやすい90分の型を用意します。
安心の土台づくり(目的・約束)
「今日は売り込みではありません」「正解探しではありません」
「言いにくいことほど助かります」など、場の約束を明確にします。
場面を思い出す(体験の入口)
「いつ/どこで/誰と/どんな気持ちで」
行動の文脈を思い出すと、言葉が具体になります。
迷い・不安・決め手を深掘り(核心)
第4章の観察ポイントを使い、止まった瞬間に注目して聞きます。
ここで初めて“本音っぽい言葉”が出やすくなります。
仮説の確認(押しつけない提示)
「こういうことってありますか?」と仮説を“たたき台”として出します。
合う/合わない/どこが違う、を確かめます。
次の一手を1つ決める(小さく実験)
企画を大きく決める必要はありません。
「次に何を試す?」を1つだけ決めて終えるのが、回る秘訣です。
進行のコツ
“いい話を引き出す”より、話が出やすい順番を守ること。
「約束→場面→迷い→仮説→次の一手」の流れが、セッションを安定させます。
質問の型:仮説を押しつけずに確かめる聞き方
共創セッションで一番やりがちなのが、説明しすぎることです。
仮説を確かめたい気持ちが強いほど、こちらが話してしまいます。
そこで、聞き方を「型」にします。
基本の聞き方(おすすめ)
- 「そのとき、何が気になりました?」
- 「一番迷ったのは、どの瞬間ですか?」
- 「それが解消されたのは、何が見えたとき?」
- 「もし友だちに話すなら、なんて言います?」
仮説の確かめ方(押しつけない)
- 「こういうことって、ありますか?」
- 「近いですか?違いますか?」
- 「もし違うなら、どこが違います?」
- 「言葉を直すなら、どんな言い方がしっくりします?」
よくあるNG(やりがち)
「つまり○○ですよね?」(答えを誘導)
「うちの商品は△△で…」(説明が長い)
共創は“説得”ではなく、ズレの発見が価値です。
記録の型:後で“使える”メモにするコツ
セッションが終わった直後は「いい話だった」で終わりがちです。
でも、使える形で残せば、次の企画・発信・接客に活きます。
記録も、観察と同じく型にします。
① 事実(そのまま)
印象的な発言/迷った瞬間/何を確認したか。できれば“その言い方”で。
② 解釈(こうかも)
何を守っている?何が不安?何が決め手?を仮で書く。
③ 仮説(芯の一言)
10〜20文字でまとめる(第5章のやり方)。
④ 次の一手(1つだけ)
改善/追加/やめる、のどれかを1つ。小さく試せる形で。
録音・メモの扱い
記録は便利ですが、必ず事前に許可を取り、扱い方(外部に出さない等)を伝えましょう。
“安心”があるほど、本音は出やすくなります。
終わった後が本番:次の一手(改善案)へ落とす
共創セッションは、終わった瞬間がゴールではありません。
本当の価値は、次の一手を試して、学びを積むことにあります。
「変える」「足す」「やめる」に分ける
例:説明の順番を変える(変える)/安心材料を追加(足す)/比較を増やす表現をやめる(やめる)
一番小さく試せる形にする
例:LPの一文だけ変える/店頭POPを1枚足す/FAQを1つ追加、など。
「何が変わったら成功?」を決める
例:質問が減る/迷う時間が短くなる/問い合わせの質が変わる、など。数字でなくてもOK。
回るコツ
“大きく当てる”より、小さく確かめて積む。
これが共創マーケティングが強くなる理由です。
初心者がつまずくポイントと、やさしい直し方
つまずき①:企業側が話しすぎる
直し方:進行役は「要約」と「質問」に徹する。説明は短く、最後に。
つまずき②:正解を決めようとして空気が固くなる
直し方:目的を「確かめる」に戻す。“ズレが見つかれば成功”。
つまずき③:参加者が緊張して話が出ない
直し方:最初の10分で約束を言語化。配置は真正面を避け、飲み物を用意。
つまずき④:終わっても“何も変わらない”
直し方:最後に「次の一手」を1つだけ決め、担当と期限を軽く置く。
ひとこと
共創セッションは“上手にやる”より、続けて回ることが価値です。
小さく始めて、型を持って、少しずつ良くしていきましょう。
要点まとめ(3行)
- 共創セッションは会議ではなく、仮説を確かめてズレを直す場。
- 成功の鍵は、目的を絞り、90分の型で進行し、記録を残すこと。
- 最後は「次の一手」を1つだけ決めて、小さく試して学びを積む。
次の一歩
現場に合う“回る型”を、短時間で整理します
章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。
※ご相談後に無理な営業は行いません。