「差別化しろ」と言われても…企画迷子になる理由

更新日:2026-08-04
企画が決まらないときに

企画会議で提案すると、上司からこう言われる。

「競合と何が違うの?」
「もっと差別化できないの?」

そこで機能を加え、デザインを変え、価格や容量も見直してみる。
けれど、案を出すほど企画の軸が分からなくなっていく

このような企画迷子は、担当者の発想力が足りないから起きるのではありません。
「競合と何が違うか」から考え始めていること自体が、迷走の原因になっている場合があります。

この記事で考えること

・なぜ「差別化しろ」と言われるほど企画がぼやけるのか

・競合との違いではなく、生活者が選ぶ理由をどう見つけるか

・商品、伝え方、売り場のどこを確かめればよいのか

1. 「差別化しろ」と言われるほど、企画がぼやける

「もっと差別化してほしい」と言われた企画担当者は、まず競合商品を見直します。

よくある対応

機能や仕様を追加する

新しい機能を加えたり、容量や素材を変えたりして、目に見える違いを作ろうとします。

よくある対応

デザインや見せ方を変える

パッケージ、色、ネーミング、キャッチコピーを変え、目立たせようとします。

よくある対応

ターゲットを広げる

「若い人にも」「男性にも」「もっと幅広い人に」と対象を増やし、企画の焦点がぼやけていきます。

最後に残りやすい案

価格や条件を変える

違いを作れないまま、値下げや増量、キャンペーンに頼る案へ近づいていきます。

もちろん、機能やデザインを変えることが間違いなのではありません。
問題は、なぜ変えるのかが決まっていないまま、違いだけを作ろうとすることです。

企画が迷子になる瞬間

案は増えているのに、どれを選ぶべきか判断できない。
会議では意見が出るのに、決め手がない。

これはアイデアが不足しているのではなく、判断の基準が生活者の側に置かれていない状態です。

2. 企画迷子になるのは、違いを社内だけで探しているから

企画会議では、どうしても競合との比較が中心になります。

  • 競合にはない機能があるか
  • 他社より性能が高いか
  • 見た目に新しさがあるか
  • 価格にお得感があるか
  • 説明したときに目立つか

しかし、生活者は必ずしも企画書の比較表どおりに商品を選んでいるわけではありません。

棚の前で一瞬迷ったり、見慣れた商品を手に取ったり、便利そうだと思いながら買わなかったりします。
その判断には、機能や価格だけでは説明できない生活の文脈があります。

生活者が実際に見ていること

  • 使う場面:いつ、どこで、誰と使うのか
  • 手間:準備、片づけ、保管が面倒ではないか
  • 気持ち:安心できるか、失敗しそうではないか
  • 習慣:いつもの行動を変えるほどの理由があるか
  • 理解:自分に関係のある商品だとすぐ分かるか

社内だけで違いを考えていると、こうした判断材料が抜け落ちます。
その結果、作り手にとっては大きな違いでも、生活者には「自分が選ぶ理由」になっていないことが起こります。

3. 必要なのは「違う商品」ではなく「選ぶ理由」

差別化という言葉を、いったん横に置いてみます。

本当に必要なのは、競合と違う商品を作ることではなく、生活者の中に 「これなら自分に合いそうだ」 「この場面なら使いたい」 という理由が生まれることです。

競合との違いを作る

違いは説明できるが、買う理由になるとは限らない

生活者が選ぶ場面を確かめる

商品・伝え方・売り場のどこを変えるべきかが見えてくる 目指すのは「違って見えること」ではなく「選ぶ理由が生まれること」

例えば、企業側が「何にでも使えること」を強みだと考えていても、生活者には 「結局、何に使う商品なのか分からない」 と受け取られることがあります。

また、企業側が「高いから売れない」と考えていても、実際には価格ではなく、 良さが伝わっていない 使う場面が想像できない ことが原因かもしれません。

差別化の前に切り分けたいこと

売れない原因は、本当に商品そのものにあるのでしょうか。

商品を変えるべきなのか。
伝え方を変えるべきなのか。
売り場や見せる順番を変えるべきなのか。

ここを切り分けないまま「もっと差別化する」と、企画はさらに迷いやすくなります。

4. 生活者と確かめると、企画の軸が見えてくる

企画が決まらないとき、完成した案を評価してもらうだけでは十分でない場合があります。

「A案とB案のどちらが好きですか」と聞けば、どちらかは選ばれます。
しかし、それだけではなぜ選んだのか実際に買うのかまでは分かりません。

大切なのは、生活者が選ぶ場面や使う場面を見ながら、企画の前提そのものを確かめることです。

売り場で確かめる

何と比較し、どこで迷うのか

競合商品との違いだけでなく、そもそも商品に気づくのか、説明をどう受け取るのかを見ます。

使う場面で確かめる

便利さが本当に価値になっているか

使い方、準備、保管、片づけまでを見ると、企画書では見えなかった負担や価値が分かります。

対話で確かめる

なぜ必要なのかを本人の言葉で聞く

「良い」「便利」だけで終わらせず、どんな場面で、どんな気持ちが変わるのかをたどります。

小さく試す

商品を大きく変える前に反応を見る

POPの一文、見せる順番、説明の仕方など、小さな変更から試すと原因を切り分けやすくなります。

こうして確かめていくと、生活者の言葉をそのまま採用するのではなく、 企業が何を変えるべきかを判断する材料が増えていきます。

現場で見つかるのは「答え」だけではありません

本当に価値がないのか。伝わっていないだけなのか。
商品を変えるべきか。見せ方を変えるべきか。
企画を進めるべきか、いったん見送るべきか。

生活者との対話や観察は、企画案を増やすためではなく、判断できる状態をつくるために行います。

5. 企画が決まらないときに、最初に確認したいこと

「もっと差別化して」と言われ、企画の方向が定まらなくなったときは、アイデアを増やす前に次の点を確認してみてください。

企画を進める前の確認項目

  • 生活者が選ぶ理由を説明できるか
    競合との違いではなく、「なぜこの商品を選ぶのか」を言葉にできるでしょうか。
  • その理由は、実際の行動や言葉から見つけたものか
    社内の推測や想定だけで決めていないでしょうか。
  • 商品・伝え方・売り場のどこに問題があるか切り分けられているか
    商品そのものを変えなくても解決できる可能性はないでしょうか。
  • 変えられる範囲と変えられない条件が整理されているか
    コスト、納期、設備、ブランド方針など、判断の前提を共有できているでしょうか。
  • 完成してからではなく、迷っている段階で生活者に見てもらっているか
    決定後の確認ではなく、判断前の材料を集められているでしょうか。

これらが整理できると、会議の論点も変わります。

「どの案が面白いか」ではなく、
「どの案なら生活者が選ぶ理由につながるか」。

「競合より目立つか」ではなく、
「生活者のどの迷いを減らせるか」。

企画の判断基準が、社内の好みから生活者の現実へ少しずつ移っていきます。

6. まとめ|差別化を考える前に、選ばれる理由を確かめる

この記事の要点

  • 「差別化しろ」と言われて迷うのは、発想力不足とは限らない
  • 競合との違いだけを社内で探すと、生活者の選ぶ理由が抜け落ちる
  • 商品、伝え方、売り場のどこに原因があるのかを切り分ける
  • 生活者との対話や観察は、答えをもらうためではなく判断材料を増やすために行う
  • 差別化の前に「なぜ選ばれるのか」を確かめる

次に会議で「もっと差別化を」と言われたとき、すぐに新しい機能や奇抜な案を考える必要はありません。

まずは、生活者がどの場面で迷い、何を理由に選ぶのかを確かめてみてください。

そこから見つかった事実が、商品を変えるのか、伝え方を変えるのか、売り場を変えるのかを判断する軸になります。

企画の「どこで迷っているか」を、一緒に整理します

競合との違いが見つからない。
案は出るけれど、社内で決めきれない。
商品を変えるべきか、伝え方を変えるべきか分からない。

そのような段階から、生活者の行動や言葉を手がかりに、 何を確かめれば企画が前に進むのかを整理します。

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