顧客インサイト(Customer Insight)
定義
顧客インサイトとは、アンケートの回答や購買データには直接は現れない、顧客の「本音」「隠れた動機」「行動の背景にある意味」を読み解いた気づきのことです。
「何を買ったか」「どれくらい買ったか」といった表面的な情報ではなく、「なぜそうするのか」「その行動の裏にどんなストーリーがあるのか」まで踏み込んだ理解を指します。
・インサイト=データそのものではなく、データから導かれた“意味の解釈”
・顧客の言葉の奥にある「本当に叶えたいこと」を照らし出す視点
・新しい価値提案やコミュニケーションの出発点になる
なぜ顧客インサイトが重要なのか
- 機能だけでは差別化しづらい: 似た商品があふれる中で、スペックや価格だけでは選ばれにくくなっている。
- 「共感」で選ばれる時代: 生活者は「自分の気持ちや価値観をわかってくれるブランド」を好む傾向が強まっている。
- 価値共創の土台になる: インサイトをもとに、企業と生活者が一緒に「本当に役立つ価値」を考えることができる。
価値共創マーケティングとの関係
価値共創マーケティングでは、企業が一方的に「想定顧客像」をつくるのではなく、生活者との対話や共創を通じて、リアルなインサイトを一緒に発見していくプロセスを重視します。
共創セッションや買い物同行、こらぼれーたーとの対話などで集まるエピソードは、単なる「ご意見」ではなく、文脈価値(コンテクスチュアル・バリュー)やジョブ理論(JTBD)とも結びついたインサイトの源泉になります。
実務での活用例
- 新商品企画で、購買理由を「安いから」ではなく「失敗したくないから」「自分へのごほうびだから」と再解釈し、コンセプトやパッケージを見直す。
- 広告コピーを「高機能・多機能」ではなく、「忙しい朝でも、これひとつで“ちゃんとやれている自分”になれる」など、感情の変化に寄せた表現にする。
- クレームや不満の声を、そのまま改善点として扱うのではなく、「どうありたかったのか」という理想像を探り、体験設計に反映する。
具体例
例えば、子ども向けお菓子の購入理由を調べた際、表面的には「味」「価格」「量」が挙がります。
しかし共創の場で話を深掘りすると、「忙しくても子どもと小さな“楽しい時間”を共有したい」「自分なりにちゃんと選んであげている実感が欲しい」
といった本音が見えてくることがあります。
こうした顧客インサイトをもとに、「親子の小さなごほうび時間」をコンセプトにした商品・コミュニケーションへと発展させることができます。
FAQ
- Q. 顧客インサイトと顧客ニーズはどう違いますか?
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A. ニーズは「欲しいもの・不便に感じていること」といった表層的な要望を指します。
一方インサイトは、そのニーズの裏側にある「なぜそう感じるのか」「本当はどうなりたいのか」という深い動機の解釈です。 - Q. インサイトはどのように見つければよいですか?
- A. アンケートだけではなく、観察・インタビュー・共創ワークショップなどで、 具体的なエピソードや文脈(いつ・どこで・誰と・どんな気持ちで)を丁寧に聞き出すことが有効です。 そこから「共通するパターン」や「言葉になっていない本音」を抽出します。
- Q. インサイトは1つの商品につき1つだけですか?
- A. 複数存在することがほとんどです。ただし、実務ではターゲットやシーンごとに核となるインサイトを絞り込むことで、 メッセージや体験設計がぶれにくくなります。
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