価値共創マーケティング 実践ガイド

第10章 成果の測り方:KPIと学習サイクルで育てる

第9章では、社内を動かすための「仕組み」(見える化/1枚カード/小さなサイクル)を整えました。
でも、ここで次の壁が出ます。
「で、結局どれくらい良くなったの?」——この問いに答えられないと、続きません。
この章では、売上だけに頼らず、共創の前進を見える化するKPIと、学習が積み上がる回し方を、初めての方にもわかるように丁寧に説明します。

対象:中小企業(BtoC) テーマ:KPI/学習サイクル/改善の積み上げ 所要:45〜70分

最初に:KPIは「評価」ではなく「前に進むための計器」

KPI(重要業績評価指標)という言葉は、少し固く聞こえます。
そして、こう思われがちです。
「KPI=管理される」「KPI=詰められる」「KPI=数字で縛られる」。

でも、この本で扱うKPIは違います。
ここでのKPIは、誰かを評価するためではなく、前に進むための“計器”です。

KPI(やさしい定義)

KPIとは、取り組みが「良い方向に進んでいるか」を確認するための目印です。
車でいえばスピードメーターや燃料計。迷子にならないために使います。

この章の約束

・難しい言葉はできるだけ使いません。
・「数字がないと無理」ではなく、現場で拾える指標も扱います。
・完璧な設計より、回して育てることを重視します。

売上だけでは危ない理由:共創の成果は“途中”に出る

もちろん、最終的に売上は大事です。
でも、売上だけを見ていると、共創は続きにくくなります。

なぜかというと、共創の成果は、まず途中の変化として出るからです。
たとえば——

問い合わせが増える前に、まず「質問の質」が変わる
購入が増える前に、まず「迷い」が減る
売上が伸びる前に、まず「説明が短く」なる
リピートが増える前に、まず「不安がほどける体験」が増える

ポイント

売上は“最後に出る結果”です。
その前に起きる途中の変化をつかめると、改善が続きます。

KPI設計の基本:3つの層(行動・中間・結果)

KPIを作るときは、いきなり「結果(売上)」から作らないほうがうまくいきます。
まずは、3つの層に分けます。

① 行動KPI(やったか)

  • 見える化カードを何枚作ったか
  • 2週間サイクルを回した回数
  • 改善を1つ実装したか

まずは「動いた」ことを確認する指標。

② 中間KPI(変わったか)

  • 迷いが減ったか
  • 説明が短くなったか
  • 不安が減ったか

共創が効き始める“途中の変化”。

③ 結果KPI(成果)

  • 購入率/成約率
  • 客単価/継続率
  • 売上/利益

最後に見る「結果」。

作り方の順番(おすすめ)

①行動KPI → ②中間KPI → ③結果KPI の順で作ります。
こうすると「何をすれば良いか」が明確になり、続きます。

共創に効くKPI例:迷い/納得/不安の減り方を測る

価値共創マーケティングの中心は、「お客さまの迷い・不安」をほどき、「納得」を増やすことでした。
ならば、そこを測れば良い。ここがシンプルな発想です。

中間KPI(おすすめ例)

迷いが減ったか

・比較検討の問い合わせが減る/変わる
・「結局どれがいい?」が減る
・説明後に決めるまでの時間が短くなる

納得が増えたか

・「それなら安心です」が増える
・同じ説明でも反応が良くなる
・紹介や口コミが増える(小さくても兆し)

不安が減ったか

・返品・キャンセル理由が変わる/減る
・よくある質問が減る/短くなる
・クレームの“根っこ”が減る

説明が短くなったか(営業・現場に効く)

・接客の平均時間が短くなる
・値引き交渉が減る/理由が変わる
・新人でも説明が通る(標準化が進む)

ポイント

“売上”だけを追うと、改善の手が見えなくなります。
でも「迷いが減った」「説明が短くなった」は、改善の方向が見える。
だから、共創は続きます。

測り方:数字がなくても拾える「現場の証拠」

「数字が取れません」という相談は多いです。
大丈夫です。最初から完璧な数値管理は必要ありません。

まずは、現場で拾える“証拠”を集めます。
これも立派なKPIの材料です。

会話の証拠

  • よく出る質問の変化
  • 「迷いの言葉」が減る
  • 「安心の言葉」が増える

会話は“迷い→納得”が見えます。

行動の証拠

  • 離脱が減る(Webなら滞在やクリック)
  • 比較ページを見る前に決まる
  • 問い合わせの内容が具体的になる

行動は“迷いの減り方”が見えます。

記録のコツ(1分でできる)

1)「変化があった一言」をメモする(例:それなら安心)
2)どの場面で出たかを書く(例:説明後、比較の話が消えた)
3)次に何を試すかを1つだけ書く(例:冒頭の順番を変える)
——この3点が揃うと、学習が積み上がります。

学習サイクル:2週間で回す“改善の型”

KPIは「測る」だけだと意味がありません。
大事なのは、測った結果を使って次の一歩につなげることです。

学習サイクル(やさしい定義)

学習サイクルとは、結果を見て終わりにせず、学びを次の改善に変える流れです。
「測る → 学ぶ → 次を試す」を短い周期で回します。

1

仮説を1つだけ決める

例:「迷いは“選び方がわからない”が原因。目安を最初に出す」

2

改善を1つだけ入れる

例:Web冒頭の順番/店頭POP/説明トークの順番を変える

3

KPIを見る(数字+証拠)

例:会話の変化、よくある質問、離脱、問い合わせ内容を確認

4

学びを1行で残す

例:「目安を先に出すと“比較の質問”が減り、決める人が増えた」

5

次の一歩をまた1つ決める

改善を増やしすぎず、次も“1つ”に絞る

ポイント

共創で強いのは「一発の大改善」ではなく、小さな改善の積み上げです。
だから、KPIは“成績表”ではなく、“次の改善を決める道具”として使います。

KPIが形骸化しないコツ:見方・会議・責任の置き方

KPIは、やり方を間違えると「報告資料」になってしまいます。
そうなると、現場は疲れ、共創は止まります。

形骸化を防ぐコツを、3つに絞ってお伝えします。

見る数を絞る:KPIは3〜5個で十分(増やすと止まる)
会議を短くする:15分で「学び」と「次の一歩」だけ決める
責任を軽くする:誰かを責めず「試して学ぶ」文化にする

最小セット(これだけで回ります)

・行動KPI:2週間サイクルを回した回数
・中間KPI:迷いが減ったサイン(会話/離脱/質問の変化)
・結果KPI:購入率 or 成約率(取れる範囲で)
——この3つが揃えば、改善は前へ進みます。

この本のまとめ:10章で手に入る「回る型」

第1章から第10章まで、共創マーケティングを「現場で回る形」に落とすために、順番に積み上げてきました。
最後に、全体をもう一度、短く整理します。

価値共創マーケティング:回る型(全体像)

見る(理解する)

アンケートだけに頼らず、場づくり・観察・対話で“本音”を拾う。

言語化する(仮説を立てる)

刺さる仮説に落とし、企画へつなげる。

形にする(体験を整える)

伝え方・売り方を“迷い→納得”の順で設計する。

社内で回す(継続する)

1枚カード+小さなサイクルで、部署を超えて進める。

学習で育てる(測って改善する)

KPIで前進を見える化し、小さな改善を積み上げる。

最後に

価値共創は、特別な会社だけのものではありません。
大事なのは、完璧な計画より、現場の事実から小さく試して学ぶこと。
この「回る型」ができると、価格ではなく納得と共感で選ばれる状態が育っていきます。

要点まとめ(3行)

  • KPIは評価ではなく、取り組みが前に進むための計器として使う。
  • 売上の前に出る「迷い・不安・納得」の変化を中間KPIでつかむと継続できる。
  • 2週間で「仮説→改善→KPI→学び→次」を回し、小さな改善を積み上げる

次の一歩

現場に合う“回る型”を、短時間で整理します

章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。

※ご相談後に無理な営業は行いません。