価値共創マーケティング 実践ガイド
第8章 伝え方・売り方へ:共感が生まれる体験設計
第7章で、セッションの学びを「企画カード」に落とし、試せる形を作りました。
ここからは、それを伝え方と売り方につなげます。
ポイントは、うまい言葉で説得することではありません。
お客さまが自分の状況に照らし合わせて「たしかに」とうなずく——そんな共感と納得が生まれる体験を設計します。
最初に:伝え方=コピーではなく「体験の順番」
「伝え方を工夫しよう」というと、キャッチコピーや広告表現を連想しがちです。
もちろん言葉は大事です。でも、もっと大事なのは順番です。
体験設計(やさしい定義)
体験設計とは、商品を売るための演出ではなく、
お客さまが迷い→納得→安心→行動へ進めるように、情報と接点の順番を整えることです。
たとえば、初めての人が買うときは、頭の中でこんな順番が起きています。
ポイント
伝え方の失敗は、「内容」より「順番」のズレで起きます。
まずはお客さまの頭の中の順番に合わせるところから始めます。
共感が生まれる3条件:場面/不安/安心の根拠
「共感される発信」を目指すと、つい“感情的な言葉”を増やしがちです。
でも、共感は盛り上げで生まれるというより、自分ごと化で生まれます。
条件① 場面が見える
- いつ/どこで/何の前後で
- 誰と/どんな状況で
- 何が起きているときか
場面が具体だと「私のことだ」に近づきます。
条件② 不安が言語化される
- 何が怖いのか
- どこで迷うのか
- 失敗とは何か
不安が出ると、読み手は前のめりになります。
条件③ 安心の根拠がある
- 実例/レビュー/比較
- 手順/保証/サポート
- 選び方の目安
安心がないと「いい話」で終わります。
まとめ:この3点が揃う
- 場面(自分ごと)
- 不安(関心が立つ)
- 根拠(行動できる)
これが“共感が行動につながる”形です。
第7章とのつながり
第7章の「価値提案の芯(誰の/場面/不安/安心)」は、まさにこの3条件を作るための材料です。
だから、芯が一行で言えると、伝え方も売り方もブレにくくなります。
伝わる言葉の作り方:本音の言い方を“借りる”
企業が作る言葉は、どうしても「説明」になりがちです。
でも、お客さまが欲しいのは説明というより、自分の状況を整理できる言葉です。
言葉づくりの原則
伝わる言葉は“作る”というより、現場の言い方を借りて整える。
セッションや観察で拾った言葉には、価値があります。
なぜなら、その言葉は「迷い」や「不安」を抱えた状態から出ているからです。
ここでは、その言葉を売れる言葉に加工するのではなく、伝わる形に整える手順を紹介します。
そのままの言い方を1つ選ぶ
「これで合ってるのかな」「失敗したくない」など、自然な言い方。
何が不安なのかを一段掘る
例:失敗=時間/お金/恥/家族の反応…どれが怖い?
安心の条件を1つ足す
「最初の一歩が迷わない」「選び方が分かる」など、安心の形を入れる。
使いやすい“言葉の型”(そのまま使えます)
型A:場面→不安→安心
「(この場面)で、(この不安)が出る。だから(この安心)が必要。」
型B:迷い→選び方→背中押し
「迷うのは普通。まずは(選び方の目安)だけ押さえれば大丈夫。」
型C:誤解をほどく
「(よくある思い込み)より、実は(大事なポイント)が決め手です。」
やりがちなNG
言葉を“かっこよく”しようとすると、読み手の頭に入りません。
まずは、暮らしの言葉で。「短い・具体・場面」が正解です。
売り方を整える:迷いを減らす「導線の設計」
売り方を整えるとき、よくある失敗は「情報を増やす」ことです。
情報が増えるほど、お客さまは迷います。
ここでのポイントは、情報量ではなく、迷いを減らす順番です。
導線(やさしい定義)
導線とは、ページや店内の動線だけではなく、
お客さまが「理解→比較→納得→行動」に進むための考える順番です。
迷いが増える導線(よくある)
- 最初から機能説明が長い
- 選び方が後回し
- 比較ポイントが多すぎる
- 最後に急に購入ボタン
“読むほど迷う”状態になりやすい。
迷いが減る導線(おすすめ)
- まず「場面」で自分ごと化
- 次に「不安」を言語化
- 「選び方の目安」を提示
- 「安心の根拠」を置く
納得が進むと行動も自然になります。
導線設計のコツ
お客さまは「買いたい」より先に「失敗したくない」が来ます。
だから、売り方は背中を押すより、不安をほどく設計が効きます。
体験設計の型:「安心が立ち上がる順番」
ここからは、Webでも店頭でも使える「体験設計の型」を紹介します。
これは、コピーの型ではなく、お客さまの心理の流れに合わせた順番です。
安心が立ち上がる順番(型)
① 場面提示
「こんなときありませんか?」(いつ・どこで・どんな前後)
② 不安の言語化
「ここで迷うのは普通です」(何が怖い?何が分からない?)
③ 選び方の目安
「まずはこれだけ見ればOK」(3つ以内に絞る)
④ 安心の根拠
実例・比較・保証・手順・レビューなど(安心の理由)
⑤ 最初の一歩
「まずはここから」(小さな行動:試す/相談/チェック)
重要
「⑤最初の一歩」が弱いと、納得しても動けません。
購入だけが一歩ではなく、チェック・相談・試用など“軽い一歩”を用意するのがコツです。
接点別チェック:店頭/Web/SNS/対面
同じ商品でも、接点が違うと「迷い方」も違います。
ここでは、代表的な接点ごとに、体験設計のチェックポイントを整理します。
店頭(POP・接客)
- 場面が一言で伝わる?
- 迷いを1つだけ減らせてる?
- 選び方の目安がある?
- 「最初の一歩」が用意されてる?
Web(LP・商品ページ)
- 説明の順番は“安心の順番”?
- 比較ポイントは3つ以内?
- レビューは“迷い”に答えてる?
- 購入前の不安をほどけてる?
SNS(投稿・リール)
- 場面がすぐ伝わる?
- 不安を言語化できてる?
- 安心の根拠は軽く出せる?
- 次の一歩(リンク先)は明確?
対面(相談・イベント)
- 相手の場面を聞けてる?
- 不安を“言っていい空気”?
- 根拠を押しつけてない?
- 一歩目を一緒に決める?
補足
接点が増えるほど、同じことを繰り返し言う必要はありません。
むしろ、接点ごとに役割を分けて「順番」を作ると、迷いが減ります。
すぐ試せる改善:今日からできる7つの手直し
ここまで読んで「なるほど」と思っても、現場では時間が取れないこともあります。
そこで、今日からでも試せる“手直し”を7つに絞ります。
ひとつでいいので、まずやってみてください。
どれからやる?
迷ったら、まずは①場面と⑤最初の一歩です。
「自分ごと」になって、「動ける」ようになると、全体が回り始めます。
次章につながる:社内を動かす(合意形成・継続)へ
伝え方・売り方は、外向きの工夫に見えます。
でも実際は、ここを変えると社内の動き方も変わります。
なぜなら、体験設計には「何を大事にするか」がはっきり出るからです。
次の章につながる話
第9章では、価値共創を社内で回し続けるためのコツを整理します。
部署横断・合意形成・続ける仕組み——「やりたい人だけが頑張る状態」を抜け出すための考え方を、やさしく説明します。
要点まとめ(3行)
- 伝え方はコピーではなく、迷い→納得→安心→行動へ進む「順番」を整えること。
- 共感が行動につながるには、場面/不安/安心の根拠の3点が必要。
- 売り方は情報を増やすより、迷いを減らす導線と「最初の一歩」を軽くすることが効く。
次の一歩
現場に合う“回る型”を、短時間で整理します
章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。
※ご相談後に無理な営業は行いません。