価値共創マーケティング 実践ガイド

第8章 伝え方・売り方へ:共感が生まれる体験設計

第7章で、セッションの学びを「企画カード」に落とし、試せる形を作りました。
ここからは、それを伝え方売り方につなげます。
ポイントは、うまい言葉で説得することではありません。
お客さまが自分の状況に照らし合わせて「たしかに」とうなずく——そんな共感と納得が生まれる体験を設計します。

対象:中小企業(BtoC) テーマ:伝え方/売り方/体験設計 所要:35〜55分

最初に:伝え方=コピーではなく「体験の順番」

「伝え方を工夫しよう」というと、キャッチコピーや広告表現を連想しがちです。
もちろん言葉は大事です。でも、もっと大事なのは順番です。

体験設計(やさしい定義)

体験設計とは、商品を売るための演出ではなく、
お客さまが迷い→納得→安心→行動へ進めるように、情報と接点の順番を整えることです。

たとえば、初めての人が買うときは、頭の中でこんな順番が起きています。

1「自分に関係ある?」(場面に当てはめる)
2「失敗しない?」(不安が出る)
3「根拠は?」(安心材料を探す)
4「やってみよう」(行動に移る)

ポイント

伝え方の失敗は、「内容」より「順番」のズレで起きます。
まずはお客さまの頭の中の順番に合わせるところから始めます。

共感が生まれる3条件:場面/不安/安心の根拠

「共感される発信」を目指すと、つい“感情的な言葉”を増やしがちです。
でも、共感は盛り上げで生まれるというより、自分ごと化で生まれます。

条件① 場面が見える

  • いつ/どこで/何の前後で
  • 誰と/どんな状況で
  • 何が起きているときか

場面が具体だと「私のことだ」に近づきます。

条件② 不安が言語化される

  • 何が怖いのか
  • どこで迷うのか
  • 失敗とは何か

不安が出ると、読み手は前のめりになります。

条件③ 安心の根拠がある

  • 実例/レビュー/比較
  • 手順/保証/サポート
  • 選び方の目安

安心がないと「いい話」で終わります。

まとめ:この3点が揃う

  • 場面(自分ごと)
  • 不安(関心が立つ)
  • 根拠(行動できる)

これが“共感が行動につながる”形です。

第7章とのつながり

第7章の「価値提案の芯(誰の/場面/不安/安心)」は、まさにこの3条件を作るための材料です。
だから、芯が一行で言えると、伝え方も売り方もブレにくくなります。

伝わる言葉の作り方:本音の言い方を“借りる”

企業が作る言葉は、どうしても「説明」になりがちです。
でも、お客さまが欲しいのは説明というより、自分の状況を整理できる言葉です。

言葉づくりの原則

伝わる言葉は“作る”というより、現場の言い方を借りて整える

セッションや観察で拾った言葉には、価値があります。
なぜなら、その言葉は「迷い」や「不安」を抱えた状態から出ているからです。
ここでは、その言葉を売れる言葉に加工するのではなく、伝わる形に整える手順を紹介します。

1

そのままの言い方を1つ選ぶ

「これで合ってるのかな」「失敗したくない」など、自然な言い方。

2

何が不安なのかを一段掘る

例:失敗=時間/お金/恥/家族の反応…どれが怖い?

3

安心の条件を1つ足す

「最初の一歩が迷わない」「選び方が分かる」など、安心の形を入れる。

使いやすい“言葉の型”(そのまま使えます)

型A:場面→不安→安心

「(この場面)で、(この不安)が出る。だから(この安心)が必要。」

型B:迷い→選び方→背中押し

「迷うのは普通。まずは(選び方の目安)だけ押さえれば大丈夫。」

型C:誤解をほどく

「(よくある思い込み)より、実は(大事なポイント)が決め手です。」

やりがちなNG

言葉を“かっこよく”しようとすると、読み手の頭に入りません。
まずは、暮らしの言葉で。「短い・具体・場面」が正解です。

売り方を整える:迷いを減らす「導線の設計」

売り方を整えるとき、よくある失敗は「情報を増やす」ことです。
情報が増えるほど、お客さまは迷います。
ここでのポイントは、情報量ではなく、迷いを減らす順番です。

導線(やさしい定義)

導線とは、ページや店内の動線だけではなく、
お客さまが「理解→比較→納得→行動」に進むための考える順番です。

迷いが増える導線(よくある)

  • 最初から機能説明が長い
  • 選び方が後回し
  • 比較ポイントが多すぎる
  • 最後に急に購入ボタン

“読むほど迷う”状態になりやすい。

迷いが減る導線(おすすめ)

  • まず「場面」で自分ごと化
  • 次に「不安」を言語化
  • 「選び方の目安」を提示
  • 「安心の根拠」を置く

納得が進むと行動も自然になります。

導線設計のコツ

お客さまは「買いたい」より先に「失敗したくない」が来ます。
だから、売り方は背中を押すより、不安をほどく設計が効きます。

体験設計の型:「安心が立ち上がる順番」

ここからは、Webでも店頭でも使える「体験設計の型」を紹介します。
これは、コピーの型ではなく、お客さまの心理の流れに合わせた順番です。

安心が立ち上がる順番(型)

① 場面提示

「こんなときありませんか?」(いつ・どこで・どんな前後)

② 不安の言語化

「ここで迷うのは普通です」(何が怖い?何が分からない?)

③ 選び方の目安

「まずはこれだけ見ればOK」(3つ以内に絞る)

④ 安心の根拠

実例・比較・保証・手順・レビューなど(安心の理由)

⑤ 最初の一歩

「まずはここから」(小さな行動:試す/相談/チェック)

重要

「⑤最初の一歩」が弱いと、納得しても動けません。
購入だけが一歩ではなく、チェック・相談・試用など“軽い一歩”を用意するのがコツです。

接点別チェック:店頭/Web/SNS/対面

同じ商品でも、接点が違うと「迷い方」も違います。
ここでは、代表的な接点ごとに、体験設計のチェックポイントを整理します。

店頭(POP・接客)

  • 場面が一言で伝わる?
  • 迷いを1つだけ減らせてる?
  • 選び方の目安がある?
  • 「最初の一歩」が用意されてる?

Web(LP・商品ページ)

  • 説明の順番は“安心の順番”?
  • 比較ポイントは3つ以内?
  • レビューは“迷い”に答えてる?
  • 購入前の不安をほどけてる?

SNS(投稿・リール)

  • 場面がすぐ伝わる?
  • 不安を言語化できてる?
  • 安心の根拠は軽く出せる?
  • 次の一歩(リンク先)は明確?

対面(相談・イベント)

  • 相手の場面を聞けてる?
  • 不安を“言っていい空気”?
  • 根拠を押しつけてない?
  • 一歩目を一緒に決める?

補足

接点が増えるほど、同じことを繰り返し言う必要はありません。
むしろ、接点ごとに役割を分けて「順番」を作ると、迷いが減ります。

すぐ試せる改善:今日からできる7つの手直し

ここまで読んで「なるほど」と思っても、現場では時間が取れないこともあります。
そこで、今日からでも試せる“手直し”を7つに絞ります。
ひとつでいいので、まずやってみてください。

ページ冒頭を「場面」から始める(誰のどんなとき?)
お客さまの不安を1つだけ言語化する(迷いを代弁する)
選び方の目安を3つ以内にする(比較を減らす)
安心の根拠を1つ足す(保証/手順/レビュー/実例)
「最初の一歩」を軽くする(買う以外の一歩も用意)
専門用語を“暮らしの言葉”に置き換える(短く・具体)
説明を増やす前に、順番を整える(安心の順番に)

どれからやる?

迷ったら、まずは①場面⑤最初の一歩です。
「自分ごと」になって、「動ける」ようになると、全体が回り始めます。

次章につながる:社内を動かす(合意形成・継続)へ

伝え方・売り方は、外向きの工夫に見えます。
でも実際は、ここを変えると社内の動き方も変わります。
なぜなら、体験設計には「何を大事にするか」がはっきり出るからです。

次の章につながる話

第9章では、価値共創を社内で回し続けるためのコツを整理します。
部署横断・合意形成・続ける仕組み——「やりたい人だけが頑張る状態」を抜け出すための考え方を、やさしく説明します。

要点まとめ(3行)

  • 伝え方はコピーではなく、迷い→納得→安心→行動へ進む「順番」を整えること。
  • 共感が行動につながるには、場面/不安/安心の根拠の3点が必要。
  • 売り方は情報を増やすより、迷いを減らす導線と「最初の一歩」を軽くすることが効く。

次の一歩

現場に合う“回る型”を、短時間で整理します

章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。

※ご相談後に無理な営業は行いません。