価値共創マーケティング 実践ガイド
第5章 インサイトを言語化する:刺さる仮説の立て方
第4章で、観察から「迷い・不安・決め手」の事実を集めました。
でも、事実を集めただけでは、企画や発信に使いにくいことがあります。
この章では、その事実を相手の心に届く“言葉”に整えて、刺さる仮説(インサイト)としてまとめる方法を、
初めての方にもわかるように丁寧に説明します。
最初に:インサイトは「当てる」ものではなく「整える」もの
「インサイト」と聞くと、なんだか特別な才能が必要そうに見えます。
でも実際は、ひらめき勝負ではありません。
この章の結論(やさしい言い方)
インサイトは、観察で集めた事実を“意味のある形”に整えた仮説です。
だから、才能より手順が大事です。
言語化がうまくいかないときは、たいてい次のどちらかです。
原因A:事実が少ない/薄い
- 「たぶんこう」だけで組み立てている
- 観察のメモが「解釈」ばかり
- 迷い・不安の具体がない
原因B:言葉が“一般論”になっている
- 誰にでも当てはまる
- きれいだけど刺さらない
- 行動が変わる一言になっていない
この章では、Aを補い、Bを避けるための“型”を渡します。
本のように、順番に進めれば大丈夫です。
インサイトとは何か(やさしい定義)
インサイトは、よく「顧客の本音」と説明されます。
でも「本音」とだけ言うと、少し曖昧です。
インサイトのやさしい定義
インサイトとは、人が“そうせざるを得ない”理由を、一言で言える形にした仮説です。
「なるほど、それで迷うんだ」「だからそれが決め手になるんだ」と腑に落ちる言葉です。
たとえば「安心したい」は一般論です。
でも、「安心したい」がどんな場面で、何が怖くて、どうなれば安心なのかが見えると、
企画や伝え方が一気に具体になります。
ここが重要
インサイトは「気持ち」だけではなく、場面(状況)と迷い(不安)と決め手(納得)がセットになると強くなります。
刺さる仮説が生まれる条件:事実→意味→一言
インサイトを作るときの流れは、実は決まっています。
「事実」から始めて、「意味」を考えて、「一言」に落とします。
事実(観察で見えたこと)
迷い・確認・決め手の瞬間。何が起きたか。
意味(その行動は何を守っている?)
失敗したくない/家族に反対されたくない/損したくない、など。
一言(だから、こうなる)
相手が「それ…ある」と思う短い仮説の言葉。
なぜ「一言」にするのか
企画・デザイン・営業・発信など、関わる人が増えるほど、言葉が長いとズレます。
“一言の芯”があると、チームで同じ方向を見やすくなります。
言語化の型:初心者でもできる「6ステップ」
ここから、実際の作り方です。
事実がある前提で、6ステップで整えていきます。
観察メモから「止まった瞬間」を1つ選ぶ
迷いが出た瞬間がいちばん強い材料です。
例:レビューを何度も見直した/比較ページを行ったり来たりした、など。
その瞬間の“何が怖い?”を3つ書く
例:失敗(合わない)/損(高い)/周りの目(家族に言われる)。
まずは仮でOK。3つ出すと、芯が見えます。
“守りたいもの”を一言で書く
人は何かを守るために慎重になります。
例:自分の判断への自信/家計/時間/家族との空気、など。
決め手の瞬間をセットで書く
迷いだけだと暗くなります。
例:保証が見えた/比較が簡単だった/「同じ悩みの人の声」があった、など。
「だから」を入れて一文にする(仮説)
例:「失敗したくないから、選び方の“安心材料”が先に見えると動ける」
ここではまだ“仮”でOKです。
10文字で言い換える(芯の一言)
例:「失敗したくない」「家族に反対されたくない」「損したくない」など。
10文字で言えると、企画の芯になります。
迷ったときの合言葉
「相手は何を守っている?」
ここに戻ると、インサイトが“きれいな文章”から“刺さる言葉”に戻ります。
良いインサイト/弱いインサイトの見分け方
インサイトは「それっぽい言葉」を書けてしまうのが怖いところです。
そこで、チェックポイントを用意します。
弱いインサイト(一般論になりがち)
- みんなに当てはまる
- 場面がない
- 行動が変わらない
- 「結局、何をすれば?」が見えない
良いインサイト(刺さる)
- “その瞬間”が思い浮かぶ
- 迷いと決め手がセット
- 一言で芯が言える
- 次の一手(改善)が見える
最終チェック(これが通れば強い)
その仮説を見たときに、現場の人が「あ〜、それで手が止まるのか」と腑に落ちるか。
そして、改善案が1つすぐ出てくるか。ここがポイントです。
すぐ使える:インサイトの文章テンプレ(コピペOK)
ここでは、すぐに使える文章の型を用意します。
第4章の観察メモを、ここに当てはめてみてください。
テンプレA:迷い→守りたい→決め手
(場面)で(迷い)が起きるのは、(守りたいもの)があるから。
だから(決め手)が先に見えると、安心して選べる。
テンプレB:不安→確認→安心材料
(場面)で(確認)が増えるのは、(不安)が残っているから。
そこで(安心材料)を最初に出すと、迷いが減る。
テンプレC:一言の芯(10文字)
本当は(10文字の芯)。だから(具体的な改善)を求めている。
使い方
まずはテンプレ通りでOKです。
大事なのは“きれいに書くこと”ではなく、現場の事実に根っこがあることです。
次章へのつながり:仮説を“場”で確かめ、共創へ
ここまでで「刺さる仮説(インサイト)」ができました。
次に大事なのは、それが本当に当たっているかを確かめることです。
第6章では、仮説を持って共創セッションをどう進めるか——再現できる運営設計を扱います。
次章予告
第6章:共創セッションの進め方:再現できる運営設計
「本音が出る場」と「仮説を確かめる場」を両立する、セッションの型を具体的に解説します。
要点まとめ(3行)
- インサイトは才能ではなく、事実を整えて作る仮説。
- 刺さる仮説は、事実→意味→一言の順で作る。
- 「相手は何を守っている?」に戻ると、一般論から抜け出せる。
次の一歩
現場に合う“回る型”を、短時間で整理します
章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。
※ご相談後に無理な営業は行いません。