価値共創マーケティング 実践ガイド

第5章 インサイトを言語化する:刺さる仮説の立て方

第4章で、観察から「迷い・不安・決め手」の事実を集めました。
でも、事実を集めただけでは、企画や発信に使いにくいことがあります。
この章では、その事実を相手の心に届く“言葉”に整えて、刺さる仮説(インサイト)としてまとめる方法を、 初めての方にもわかるように丁寧に説明します。

対象:中小企業(BtoC) テーマ:インサイト/言語化/仮説 所要:30〜40分

最初に:インサイトは「当てる」ものではなく「整える」もの

「インサイト」と聞くと、なんだか特別な才能が必要そうに見えます。
でも実際は、ひらめき勝負ではありません。

この章の結論(やさしい言い方)

インサイトは、観察で集めた事実を“意味のある形”に整えた仮説です。
だから、才能より手順が大事です。

言語化がうまくいかないときは、たいてい次のどちらかです。

原因A:事実が少ない/薄い

  • 「たぶんこう」だけで組み立てている
  • 観察のメモが「解釈」ばかり
  • 迷い・不安の具体がない

原因B:言葉が“一般論”になっている

  • 誰にでも当てはまる
  • きれいだけど刺さらない
  • 行動が変わる一言になっていない

この章では、Aを補い、Bを避けるための“型”を渡します。
本のように、順番に進めれば大丈夫です。

インサイトとは何か(やさしい定義)

インサイトは、よく「顧客の本音」と説明されます。
でも「本音」とだけ言うと、少し曖昧です。

インサイトのやさしい定義

インサイトとは、人が“そうせざるを得ない”理由を、一言で言える形にした仮説です。
「なるほど、それで迷うんだ」「だからそれが決め手になるんだ」と腑に落ちる言葉です。

たとえば「安心したい」は一般論です。
でも、「安心したい」がどんな場面で何が怖くてどうなれば安心なのかが見えると、 企画や伝え方が一気に具体になります。

ここが重要

インサイトは「気持ち」だけではなく、場面(状況)迷い(不安)決め手(納得)がセットになると強くなります。

刺さる仮説が生まれる条件:事実→意味→一言

インサイトを作るときの流れは、実は決まっています。
「事実」から始めて、「意味」を考えて、「一言」に落とします。

1

事実(観察で見えたこと)

迷い・確認・決め手の瞬間。何が起きたか。

2

意味(その行動は何を守っている?)

失敗したくない/家族に反対されたくない/損したくない、など。

3

一言(だから、こうなる)

相手が「それ…ある」と思う短い仮説の言葉。

なぜ「一言」にするのか

企画・デザイン・営業・発信など、関わる人が増えるほど、言葉が長いとズレます。
“一言の芯”があると、チームで同じ方向を見やすくなります。

言語化の型:初心者でもできる「6ステップ」

ここから、実際の作り方です。
事実がある前提で、6ステップで整えていきます。

1

観察メモから「止まった瞬間」を1つ選ぶ

迷いが出た瞬間がいちばん強い材料です。
例:レビューを何度も見直した/比較ページを行ったり来たりした、など。

2

その瞬間の“何が怖い?”を3つ書く

例:失敗(合わない)/損(高い)/周りの目(家族に言われる)。
まずは仮でOK。3つ出すと、芯が見えます。

3

“守りたいもの”を一言で書く

人は何かを守るために慎重になります。
例:自分の判断への自信/家計/時間/家族との空気、など。

4

決め手の瞬間をセットで書く

迷いだけだと暗くなります。
例:保証が見えた/比較が簡単だった/「同じ悩みの人の声」があった、など。

5

「だから」を入れて一文にする(仮説)

例:「失敗したくないから、選び方の“安心材料”が先に見えると動ける」
ここではまだ“仮”でOKです。

6

10文字で言い換える(芯の一言)

例:「失敗したくない」「家族に反対されたくない」「損したくない」など。
10文字で言えると、企画の芯になります。

迷ったときの合言葉

「相手は何を守っている?」
ここに戻ると、インサイトが“きれいな文章”から“刺さる言葉”に戻ります。

良いインサイト/弱いインサイトの見分け方

インサイトは「それっぽい言葉」を書けてしまうのが怖いところです。
そこで、チェックポイントを用意します。

弱いインサイト(一般論になりがち)

  • みんなに当てはまる
  • 場面がない
  • 行動が変わらない
  • 「結局、何をすれば?」が見えない

良いインサイト(刺さる)

  • “その瞬間”が思い浮かぶ
  • 迷いと決め手がセット
  • 一言で芯が言える
  • 次の一手(改善)が見える

最終チェック(これが通れば強い)

その仮説を見たときに、現場の人が「あ〜、それで手が止まるのか」と腑に落ちるか。
そして、改善案が1つすぐ出てくるか。ここがポイントです。

すぐ使える:インサイトの文章テンプレ(コピペOK)

ここでは、すぐに使える文章の型を用意します。
第4章の観察メモを、ここに当てはめてみてください。

テンプレA:迷い→守りたい→決め手

(場面)で(迷い)が起きるのは、(守りたいもの)があるから。
だから(決め手)が先に見えると、安心して選べる。

テンプレB:不安→確認→安心材料

(場面)で(確認)が増えるのは、(不安)が残っているから。
そこで(安心材料)を最初に出すと、迷いが減る。

テンプレC:一言の芯(10文字)

本当は(10文字の芯)。だから(具体的な改善)を求めている。

使い方

まずはテンプレ通りでOKです。
大事なのは“きれいに書くこと”ではなく、現場の事実に根っこがあることです。

次章へのつながり:仮説を“場”で確かめ、共創へ

ここまでで「刺さる仮説(インサイト)」ができました。
次に大事なのは、それが本当に当たっているかを確かめることです。
第6章では、仮説を持って共創セッションをどう進めるか——再現できる運営設計を扱います。

次章予告

第6章:共創セッションの進め方:再現できる運営設計
「本音が出る場」と「仮説を確かめる場」を両立する、セッションの型を具体的に解説します。

要点まとめ(3行)

  • インサイトは才能ではなく、事実を整えて作る仮説
  • 刺さる仮説は、事実→意味→一言の順で作る。
  • 「相手は何を守っている?」に戻ると、一般論から抜け出せる。

次の一歩

現場に合う“回る型”を、短時間で整理します

章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。

※ご相談後に無理な営業は行いません。