価値共創マーケティング 実践ガイド
第4章 観察で見える「買う理由」:現場から仮説をつくる
第3章では、本音が出る「場」の設計を扱いました。
でも本音は、言葉だけではありません。人は行動でも語っています。
この章では、初心者の方でも安心して取り組めるように、観察で「買う理由」の手がかりを集めて、仮説にする方法を
やさしく、具体的に説明します。
最初に:観察は「のぞき見」ではなく、事実を集めること
「観察」と聞くと、身構える方がいます。
「ずっと見張るみたいで失礼では?」「心理学者みたいな技術が必要?」と感じるかもしれません。
でも、この章でいう観察は、そういうものではありません。
観察のやさしい定義
観察とは、人の行動の中から「迷い・不安・決め手」を示す事実を集めること。
その事実をもとに、次の一手(仮説)をつくるための材料集めです。
大事なのは、相手を“当てる”ことではなく、実際に起きていることを丁寧に拾うこと。
そして「なるほど、こういうところで迷うんだ」という現場のリアルから、企画の仮説を作っていきます。
安心の前提(ここだけ守ればOK)
観察は本人の許可と配慮が前提です。
「今日は使い方や選び方を見せてもらって、改善に活かしたいです」と目的を伝え、無理に踏み込まない。これだけで十分です。
なぜ観察が効くのか(アンケート・会話との違い)
第2章で「アンケートでは見えないもの」がある話をしました。
観察が効く理由は、とてもシンプルです。
言葉(アンケート・会話)が得意なこと
- 本人が自覚している理由
- 整理された意見(建前も含む)
- 「こう言えば伝わる」説明
行動(観察)が得意なこと
- 迷いの瞬間(手が止まる)
- 不安のサイン(何度も確認する)
- 決め手の瞬間(急に表情・動きが変わる)
ポイント
人は「買った理由」を説明できるとは限りません。
でも迷ったところや確認したところは、行動に残ります。
観察は、その“残り方”を拾う方法です。
観察で見るポイント:迷い・不安・決め手は“動き”に出る
初心者の方がいきなり全部を見ようとすると、情報が多すぎて疲れます。
まずは、次の3つだけ見ればOKです。
① 迷い(手が止まる)
- 比較が始まる
- 戻る/行ったり来たりする
- スマホ検索が入る
迷いは「決め手が足りない」サイン。
② 不安(確認が増える)
- 成分/サイズ/保証を見る
- レビューを探す
- 店員に聞く
不安は「安心材料が必要」サイン。
③ 決め手(動きが変わる)
- 比較が終わる
- カゴに入る/指が止まらない
- 表情がやわらぐ
決め手は「納得が生まれた」サイン。
観察のコツ
行動を見て「当てる」より、“どこで動きが変わったか”に注目してください。
その変化が、仮説の入口になります。
観察の型:はじめてでも失敗しない「5ステップ」
ここから、実際にやる手順です。
観察は“きれいにやる”必要はありません。再現できる流れを持っておくことが大切です。
目的を一言で伝える(安心の土台)
例:「売り込むためではなく、選びやすくする改善のために見せてください」
この一言で“調査される感じ”が減ります。
場面を決める(観察の範囲を狭める)
例:店頭で選ぶ/ECで選ぶ/家で使う/リピートするとき、など。
最初は1場面だけで十分です。
“止まった瞬間”に印を付ける(迷いの採集)
見るべきは、スムーズに進むところではなく止まるところ。
「戻った」「比較した」「検索した」など、動きの変化に印を付けます。
確認が増えた点をメモする(不安の採集)
何を確認したか(レビュー/成分/保証/価格差/誰に聞いたか)。
ここに「安心材料」のヒントがあります。
最後に“短い確認”だけする(言葉で補強)
観察後に、短く聞くだけで十分です。
例:「今いちばん迷ったのはどこでした?」 / 「最後の決め手は何でした?」
ここで初めて、言葉が“事実に近い形”で出てきます。
時間が少ない場合(最短10分)
最短なら、②場面を決める → ③止まった瞬間に印 → ⑤短い確認の3つだけでOK。
まずは“止まる場所”を見つける練習から始めましょう。
観察メモの書き方:事実→解釈→仮説を分ける
観察がうまくいかない一番の理由は、見た瞬間に結論を出してしまうことです。
そこで、メモは必ず「3つ」に分けます。これだけで精度が上がります。
① 事実(見えたこと)
- 何を見た?(動き・発言・時間)
- どこで止まった?
- 何を確認した?
② 解釈(こうかも)→③ 仮説(次の一手)
- 不安は「失敗したくない」かも
- 決め手は「比較が楽」かも
- 次の一手:安心材料を前に出す/比較を減らす
例(そのまま使える書き方)
事実:レビューを3回読み直し、☆の低いコメントだけ確認していた。
解釈:失敗(ハズレ)への不安が大きいのかも。
仮説:「合わない場合の対処」や「失敗しにくい選び方」を先に提示すると安心して選べるのでは。
こうしておくと、次章(第5章)の「言語化」で、仮説が刺さる言葉に変わりやすくなります。
よくある失敗と、やさしい直し方
失敗①:全部を見ようとして疲れる
直し方:最初は「迷い・不安・決め手」の3点だけに絞る。
失敗②:見た瞬間に決めつける
直し方:メモは「事実→解釈→仮説」に分けて書く。
失敗③:観察中に質問しすぎて流れが止まる
直し方:質問は最後にまとめて「短く」確認する。
失敗④:見たことが“企画”につながらない
直し方:「次の一手」を必ず1つ書く(安心材料/比較の減らし方/伝え方)。
ひとこと
観察は「正しく見る」より、改善につながる事実を拾うことが目的です。
小さくても“次の一手”が出れば、観察は成功です。
次章へのつながり:仮説を「刺さる言葉」にする準備
観察で集まった事実は、仮説の材料です。
でも、そのままでは企画や発信に使いにくいこともあります。
次の第5章では、ここで作った仮説を相手の言葉に近い形へ整え、刺さる言葉として言語化する方法を扱います。
次章予告
第5章:インサイトを言語化する:刺さる仮説の立て方
観察で見えた「迷い・不安・決め手」を、伝わる仮説に変える“型”を紹介します。
要点まとめ(3行)
- 観察は“のぞき見”ではなく、迷い・不安・決め手の事実を集めること。
- 見るべきは「止まる」「確認が増える」「動きが変わる」瞬間。
- メモは事実→解釈→仮説に分けると、企画につながる。
次の一歩
現場に合う“回る型”を、短時間で整理します
章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。
※ご相談後に無理な営業は行いません。