価値共創マーケティング 実践ガイド
第1章 なぜ今「価値共創マーケティング」なのか
もし今あなたが、「ちゃんと作っているのに、なぜか売れにくい」と感じているなら——それは、あなたの努力が足りないからではありません。
いま起きているのは、“良さ”の決まり方そのものが変わったという、時代の地殻変動です。
この章では、難しい言葉を使わずに、なぜ今「価値共創マーケティング」が必要になるのかを、本を読むように順を追って整理します。
最初に:この本でいう「価値」とは何か
まず、この本では「価値」という言葉を、少しだけ丁寧に扱います。
というのも、価値共創マーケティングの話は、ここがズレると全部がぼやけてしまうからです。
この本の「価値」
お客さまが、使う場面で「助かった」「これが欲しかった」と感じる“納得”や“実感”のこと。
ここで大事なのは、価値は商品そのものに固定で入っているわけではない、という点です。
同じ商品でも、使う人や場面が違えば、感じる価値は変わります。
例:同じ「水筒」でも価値は変わる
- 部活の子:氷が長く残る → 夏の練習がラクになる
- 通勤の人:漏れない → カバンに入れても安心
- 子育て中:片手で開く → 抱っこ中でも飲ませやすい
つまり、価値は「機能の説明」だけでは伝わりきらず、使う場面(暮らし)とセットで立ち上がります。
「いい商品」なのに売れないのは、あなたのせいじゃない
ここから本題です。
まず最初に、いちばん大事なことを言います。
「売れない=商品が悪い」とは限りません。
昔は、ある程度「いいもの」を作って、きちんと伝えれば売れました。
でも今は、似たような商品・サービスが増え、情報もあふれています。
その結果、お客さまは「比べる」ようになり、そして「迷う」ようになりました。
いま現場で起きていること
“差”が小さくなるほど、最後に残るのは「自分に合う気がする」という感覚です。
だから「いい商品」でも、選ばれる理由が言語化されていないと、埋もれやすくなります。
よくある状況
- 内容は良いのに「決め手がない」と言われる
- 最後は「価格」で比べられてしまう
- 広告やSNSを頑張っても、反応が伸びにくい
これは努力不足というより、“選ばれ方”が変わったサインです。
いま起きている3つの変化(選ばれ方が変わった)
「選ばれ方が変わった」と言われても、少し抽象的に聞こえるかもしれません。
ここでは、現場で実感しやすい形で、3つの変化に分けて説明します。
選択肢が増えすぎた
お客さまは「知らないから買う」のではなく、知った上で迷う状態になりました。
つまり、比較される前提の市場になっています。
性能差が小さくなった
技術が進み、どの会社も一定の品質を出せるようになりました。
その結果、スペックや機能だけでは差が伝わりにくいことが増えています。
買う理由が「感情・文脈」になった
最後の決め手は、数字では測りにくい「安心」「共感」「自分らしさ」になりやすい。
だからこそ、暮らしの場面(文脈)を押さえる必要が出てきました。
ここが本質
いま必要なのは「もっとすごい商品」を作ることだけではなく、
その商品が“どんな場面で、どんな気持ちを助けるのか”を、具体的にすることです。
人は「機能」より「体験」で選ぶようになった
では、お客さまは何を頼りに選ぶようになったのでしょうか。
ひと言でいうと、「体験」です。
ここでいう体験とは、イベントのような特別なことだけを指しません。
「買うまで」「使っている最中」「使ったあと」に起きる、小さな安心やストレスの差も体験です。
昔:機能・価格で決めやすかった
- 性能差がわかりやすい
- 比較軸が少ない
- 「いいもの」が見つけやすい
今:体験・納得で決まることが増えた
- 性能差が小さい
- 比較されすぎて迷う
- 「自分に合うか」が最重要
たとえば、こんな決め手が増えています
- 買ったあとに後悔しない気がする
- 家族に説明しても納得してもらえる
- 自分の生活に自然に馴染む
- 使うたびに気持ちが軽くなる
これらはアンケートの選択肢では拾いにくく、暮らしの場面を見ないと見えないことが多いのです。
価値共創マーケティングとは、ひと言でいうと
やさしい定義
企業とお客さまが一緒に、使う場面から「選ばれる理由」を育てていくやり方です。
ここでいう「一緒に」は、単に「意見を聞く」ことではありません。
お客さまの暮らしの中には、本人も気づいていない小さな困りごとや、言葉になりにくいつぶやきがあります。
価値共創マーケティングは、それを見つけ、企画・商品・伝え方・売り方に落としていく考え方です。
よくあるやり方(誤解されがち)
- アンケートを取る
- 会議で企画を詰める
- 広告で伝え方だけ変える
※もちろん必要な場面もあります。ただ「決め手」を作るには不足しがちです。
価値共創の考え方
- 暮らしの場面を一緒に見にいく
- 対話で“つぶやき”を拾う
- 見えたことを企画・売り方へ落とす
「正解を当てにいく」より、「納得が育つ形」に整えていきます。
補足:共創は“きれいごと”ではありません
共創は「仲良くすること」ではなく、現場の事実を増やし、迷いを減らすための方法です。
“当たる企画”を祈るのではなく、当たりやすい形に近づけるための実践です。
共創で変わるのは「商品」だけじゃない
価値共創マーケティングは、新商品を作るためだけの方法ではありません。
むしろ、取り組むほどに、事業全体の「筋の良さ」が育っていきます。
ひとこと
“当てにいく”より、一緒に見つけて育てる。
それが、長く選ばれる強さになります。
今日からできる、小さな第一歩
ここまで読むと、「やることが多そう…」と感じるかもしれません。
でも大丈夫です。価値共創は、いきなり大きなプロジェクトにする必要はありません。
まずは小さく試して、学びをためるのがいちばん確実です。
お客さまを1人だけ思い浮かべる
「よく買ってくれる人」でも「迷っている人」でもOKです。
買う前後の“場面”を3つ書く
例:買う前に何を見て迷う?家でどう使う?誰と話す?
その場面で出る“つぶやき”を想像してメモする
「これで本当に大丈夫かな」「もっと簡単だといいのに」など。
“つぶやき”が多いところを1つだけ改善してみる
商品そのものでも、説明文でも、売り場の案内でも構いません。「1つだけ」がコツです。
次の章につながる話
ここで出てくる“つぶやき”は、アンケートでは見えにくいことが多いです。
次の第2章では、顧客理解の落とし穴として「アンケートでは見えないもの」を、やさしく整理していきます。
要点まとめ(3行)
- 売れにくさの原因は「努力不足」ではなく、選ばれ方の変化にある。
- 今は「機能」よりも、使う場面の体験や納得で選ばれることが増えた。
- 価値共創マーケティングは、企業とお客さまが一緒に選ばれる理由を育てるやり方。
次の一歩
現場に合う“回る型”を、短時間で整理します
章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。
※ご相談後に無理な営業は行いません。