価値共創マーケティング 実践ガイド

第1章 なぜ今「価値共創マーケティング」なのか

もし今あなたが、「ちゃんと作っているのに、なぜか売れにくい」と感じているなら——それは、あなたの努力が足りないからではありません。
いま起きているのは、“良さ”の決まり方そのものが変わったという、時代の地殻変動です。
この章では、難しい言葉を使わずに、なぜ今「価値共創マーケティング」が必要になるのかを、本を読むように順を追って整理します。

対象:中小企業(BtoC) 目的:選ばれる理由のつくり方を理解する 所要:15〜20分

最初に:この本でいう「価値」とは何か

まず、この本では「価値」という言葉を、少しだけ丁寧に扱います。
というのも、価値共創マーケティングの話は、ここがズレると全部がぼやけてしまうからです。

この本の「価値」

お客さまが、使う場面で「助かった」「これが欲しかった」と感じる“納得”や“実感”のこと。

ここで大事なのは、価値は商品そのものに固定で入っているわけではない、という点です。
同じ商品でも、使う人や場面が違えば、感じる価値は変わります。

例:同じ「水筒」でも価値は変わる

  • 部活の子:氷が長く残る → 夏の練習がラクになる
  • 通勤の人:漏れない → カバンに入れても安心
  • 子育て中:片手で開く → 抱っこ中でも飲ませやすい

つまり、価値は「機能の説明」だけでは伝わりきらず、使う場面(暮らし)とセットで立ち上がります。

「いい商品」なのに売れないのは、あなたのせいじゃない

ここから本題です。
まず最初に、いちばん大事なことを言います。
「売れない=商品が悪い」とは限りません。

昔は、ある程度「いいもの」を作って、きちんと伝えれば売れました。
でも今は、似たような商品・サービスが増え、情報もあふれています。
その結果、お客さまは「比べる」ようになり、そして「迷う」ようになりました。

いま現場で起きていること

“差”が小さくなるほど、最後に残るのは「自分に合う気がする」という感覚です。
だから「いい商品」でも、選ばれる理由が言語化されていないと、埋もれやすくなります。

よくある状況

  • 内容は良いのに「決め手がない」と言われる
  • 最後は「価格」で比べられてしまう
  • 広告やSNSを頑張っても、反応が伸びにくい

これは努力不足というより、“選ばれ方”が変わったサインです。

いま起きている3つの変化(選ばれ方が変わった)

「選ばれ方が変わった」と言われても、少し抽象的に聞こえるかもしれません。
ここでは、現場で実感しやすい形で、3つの変化に分けて説明します。

1

選択肢が増えすぎた

お客さまは「知らないから買う」のではなく、知った上で迷う状態になりました。
つまり、比較される前提の市場になっています。

2

性能差が小さくなった

技術が進み、どの会社も一定の品質を出せるようになりました。
その結果、スペックや機能だけでは差が伝わりにくいことが増えています。

3

買う理由が「感情・文脈」になった

最後の決め手は、数字では測りにくい「安心」「共感」「自分らしさ」になりやすい。
だからこそ、暮らしの場面(文脈)を押さえる必要が出てきました。

ここが本質

いま必要なのは「もっとすごい商品」を作ることだけではなく、
その商品が“どんな場面で、どんな気持ちを助けるのか”を、具体的にすることです。

人は「機能」より「体験」で選ぶようになった

では、お客さまは何を頼りに選ぶようになったのでしょうか。
ひと言でいうと、「体験」です。

ここでいう体験とは、イベントのような特別なことだけを指しません。
「買うまで」「使っている最中」「使ったあと」に起きる、小さな安心やストレスの差も体験です。

昔:機能・価格で決めやすかった

  • 性能差がわかりやすい
  • 比較軸が少ない
  • 「いいもの」が見つけやすい

今:体験・納得で決まることが増えた

  • 性能差が小さい
  • 比較されすぎて迷う
  • 「自分に合うか」が最重要

たとえば、こんな決め手が増えています

  • 買ったあとに後悔しない気がする
  • 家族に説明しても納得してもらえる
  • 自分の生活に自然に馴染む
  • 使うたびに気持ちが軽くなる

これらはアンケートの選択肢では拾いにくく、暮らしの場面を見ないと見えないことが多いのです。

価値共創マーケティングとは、ひと言でいうと

やさしい定義

企業とお客さまが一緒に、使う場面から「選ばれる理由」を育てていくやり方です。

ここでいう「一緒に」は、単に「意見を聞く」ことではありません。
お客さまの暮らしの中には、本人も気づいていない小さな困りごとや、言葉になりにくいつぶやきがあります。
価値共創マーケティングは、それを見つけ、企画・商品・伝え方・売り方に落としていく考え方です。

よくあるやり方(誤解されがち)

  • アンケートを取る
  • 会議で企画を詰める
  • 広告で伝え方だけ変える

※もちろん必要な場面もあります。ただ「決め手」を作るには不足しがちです。

価値共創の考え方

  • 暮らしの場面を一緒に見にいく
  • 対話で“つぶやき”を拾う
  • 見えたことを企画・売り方へ落とす

「正解を当てにいく」より、「納得が育つ形」に整えていきます。

補足:共創は“きれいごと”ではありません

共創は「仲良くすること」ではなく、現場の事実を増やし、迷いを減らすための方法です。
“当たる企画”を祈るのではなく、当たりやすい形に近づけるための実践です。

共創で変わるのは「商品」だけじゃない

価値共創マーケティングは、新商品を作るためだけの方法ではありません。
むしろ、取り組むほどに、事業全体の「筋の良さ」が育っていきます。

「お客さまが何に困っているか」が具体になる
商品の説明が「伝わる言葉」に自然に変わる
価格ではなく「納得」で選ばれやすくなる
社内の議論が、想像ではなく現場の事実ベースになる
改善が回りはじめ、学びが積み上がる

ひとこと

“当てにいく”より、一緒に見つけて育てる
それが、長く選ばれる強さになります。

今日からできる、小さな第一歩

ここまで読むと、「やることが多そう…」と感じるかもしれません。
でも大丈夫です。価値共創は、いきなり大きなプロジェクトにする必要はありません。
まずは小さく試して、学びをためるのがいちばん確実です。

1

お客さまを1人だけ思い浮かべる

「よく買ってくれる人」でも「迷っている人」でもOKです。

2

買う前後の“場面”を3つ書く

例:買う前に何を見て迷う?家でどう使う?誰と話す?

3

その場面で出る“つぶやき”を想像してメモする

「これで本当に大丈夫かな」「もっと簡単だといいのに」など。

4

“つぶやき”が多いところを1つだけ改善してみる

商品そのものでも、説明文でも、売り場の案内でも構いません。「1つだけ」がコツです。

次の章につながる話

ここで出てくる“つぶやき”は、アンケートでは見えにくいことが多いです。
次の第2章では、顧客理解の落とし穴として「アンケートでは見えないもの」を、やさしく整理していきます。

要点まとめ(3行)

  • 売れにくさの原因は「努力不足」ではなく、選ばれ方の変化にある。
  • 今は「機能」よりも、使う場面の体験や納得で選ばれることが増えた。
  • 価値共創マーケティングは、企業とお客さまが一緒に選ばれる理由を育てるやり方。

次の一歩

現場に合う“回る型”を、短時間で整理します

章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。

※ご相談後に無理な営業は行いません。