ジョブ理論(JTBD)
定義
ジョブ理論(Jobs To Be Done, JTBD)とは、顧客が商品やサービスを「購入する」のではなく、
自分の生活や仕事における「片づけたいこと(ジョブ)」を達成するために“雇っている(hire)”という視点で捉えるフレームワークです。
顧客は製品そのものではなく、自分の「進歩(progress)」や「なりたい状態」を得るために商品を選びます。
・「何を買ったか」ではなく「何のために買ったか」に注目する
・機能や属性よりも、顧客の文脈・目的・感情を重視する
・顧客の進歩=その商品が担う“本当の役割(ジョブ)”と考える
ジョブ理論の役割
- 顧客理解の深化: 「○○が欲しい」ではなく、「なぜそれが必要なのか」という根本動機を明らかにできる。
- イノベーションの発見: まだ満たされていないジョブを見つけることで、新しい商品・サービスのヒントになる。
- 差別化の明確化: 競合との違いを「顧客の進歩をどこまで支援できるか」という軸で整理できる。
- マーケティングの精度向上: 顧客のジョブに寄り添ったメッセージや提案ができる。
価値共創マーケティングとの関係
価値共創マーケティングでは、企業と生活者が一緒に「どんな価値が本当に役立つか」を探ります。
そのときジョブ理論を用いると、生活者の言葉や行動の奥にある「片づけたいこと」や「なりたい姿」を共有しやすくなります。
つまりジョブ理論は、共創の場で会話の土台となる共通言語として機能し、
文脈価値(コンテクスチュアル・バリュー)を発見するための出発点にもなります。
代表的な事例
- シェイクの事例: 通勤中のドライバーは「お腹を満たす」「退屈を紛らわす」「片手で手軽に飲める」といったジョブを果たすためにシェイクを“雇っていた”とされます (クレイトン・クリステンセン教授による有名な研究)。
- ドリルの事例: 顧客は「ドリルそのもの」が欲しいのではなく、「壁に穴を開けたい」「棚を取り付けたい」「部屋を整えたい」というジョブを解決したい。
- 動画配信サービス: 「暇つぶしをしたい」「家族と一緒に楽しみたい」「最新作をすぐ見たい」といったジョブを満たす手段として選ばれている。
マーケティングへの活用
- 顧客インタビュー: 「なぜこの商品を選んだのですか?」を丁寧に掘り下げ、購入前後の状況・感情・代替案を聞くことでジョブを特定する。
- ペルソナ設計の補完: 属性情報だけでなく「片づけたいこと(ジョブ)」を軸に顧客像を描くことで、より実態に近いペルソナになる。
- 商品開発: まだ解決されていないジョブに着目し、「こういう時に本当はこうだったらいいのに」を形にする。
- 訴求メッセージ: 「この商品は◯◯という場面で、△△したい人のためのものです」と具体的なジョブを示しながら価値提案を行う。
FAQ
- Q. ジョブ理論とニーズ調査はどう違いますか?
- A. ニーズ調査は「どんな機能が欲しいか」を聞くことが中心ですが、 ジョブ理論は「なぜそれが必要か」「どんな状況で困っているか」といった文脈まで含めて理解します。
- Q. BtoBビジネスでも使えますか?
- A. はい。たとえば「見積もり作業にかかる時間を短縮したい」「属人化した業務を標準化したい」など、 法人顧客の業務上のジョブを把握することで、提案内容やサービス設計の質が高まります。
- Q. 1つの商品にジョブは複数存在しますか?
- A. 多くの場合、複数のジョブを同時に担っています。すべてを狙うのではなく、 主要なジョブに優先順位をつけてフォーカスすることが実務上は重要です。
👉 他の用語も調べたい方はこちら