社内合意の進め方|生活者視点の企画を“通る企画”に変える稟議テンプレと対話術

実践ガイド③ 社内合意(稟議テンプレ・反対の切り返し) 親ページ:総合ガイド

生活者視点の企画が社内で止まるのは、アイデアが悪いからではなく、“納得の設計”が足りないことが多いです。
反対の正体は、否定ではなく不安。「失敗したら?」「前例は?」「責任は?」——ここに先回りして安心材料を揃えると、合意は進みます。
ここでは、企画を通すための構成の型と、現場で使える稟議テンプレ・切り返し例をまとめます。


1. 社内合意が止まる本当の理由(企画の否定ではない)

社内で止まる時、表面上は「それ本当に売れる?」「根拠は?」と言われますが、深層はだいたい3つです。

リスク

失敗したらどうする?

損失・在庫・炎上・品質。怖いのは“失敗そのもの”より“取り返せない失敗”。

前例

過去の痛み/成功体験

以前の失敗で慎重になっている。逆に成功体験が強く、変えたくない。

評価

責任が曖昧で怖い

誰が決める?誰が負う?評価は?——曖昧だと“反対が安全”になります。

翻訳

文脈が“仕様”に変換される

生活者の状況が消え、要望一覧だけが残る。すると価値が伝わらない。

結論:合意形成は「正しさの勝負」ではなく、安心して賛成できる条件を揃える勝負です。

2. 合意形成は“説得”ではなく“設計”(不安を分解して潰す)

反対が出たら議論で勝とうとしがちですが、合意形成はディベートではありません。
相手の不安を分解し、「これなら進めても大丈夫」の状態を作るのが仕事です。

不安を3つに分解して“先回り”する

  • 事業リスク:損失が出る可能性 → 小さく検証、撤退条件、上限コスト
  • 実行リスク:現場が回らない → 工数見積、役割分担、工程表
  • 評判リスク:品質・クレーム → 対応フロー、FAQ、注意表示、テスト結果

合言葉:決裁者は「売れるか?」より「失敗しても致命傷にならないか?」を見ています。

3. 通る企画の5ステップ構成(型)

生活者視点の企画を通すなら、次の5点が揃うと強いです。

  1. 背景:なぜ今やるのか(価格競争/差別化/顧客離れ/市場変化)
  2. 事実:観察・対話で何が起きていたか(文脈・迷い・不安・代替)
  3. 仮説:価値仮説(選ばれる理由)を1文で
  4. 検証結果:小さく試して分かったこと(学びログ)
  5. 提案:次の検証計画/必要資源/撤退条件/リスク対策
ポイント:「意見」ではなく「事実」を中心に置くほど、社内の議論は建設的になります。 本音の取り方は 実践ガイド①、 検証の取り方は 実践ガイド② が土台です。

4. 稟議テンプレ(コピペ用)

以下をそのまま稟議書・社内提案資料の骨格として使えます。

稟議テンプレ(コピペ用) 【件名】 - 生活者視点に基づく◯◯(商品/サービス)改善・新企画の検証提案 【背景(なぜ今か)】 - 市場/顧客の変化: - 現状の課題(価格競争・差別化など): - 放置した場合のリスク: 【事実(観察・対話で起きていること)】 - 対象の状況(いつ/どこ/誰が): - 迷い(どこで止まるか): - 不安(言いにくい本音): - 面倒(続かない原因): - 代替行動(競合の広がり): 【仮説(選ばれる理由)】 - 1文仮説: - 期待する変化(行動・継続・推奨): 【検証(実施内容と学び)】 - プロトタイプ: - テスト条件(対象/場所): - 観察ポイント: - 学び(事実→解釈): 【提案(次の一手)】 - 次の検証計画(期間/回数/対象): - 必要リソース(人・予算・外注): - 役割分担(RACI): - 撤退条件(上限コスト/判断基準): - リスク対策(品質・クレーム・運用): 【期待効果】 - 短期: - 中期: - 長期:
使い方:「仮説」と「撤退条件」を必ず入れると、決裁側の不安が大きく減ります。

5. 反対意見の切り返し例(よくある10パターン)

Q1. それって一部の人の意見では?
A. 人数の多さではなく「状況の再現性」で見ます。どの状況で迷いが発生し、何が止めているかを事実で示します。
Q2. 根拠が弱い。数字はあるの?
A. 数字は必要です。まずは“どこがズレか”を特定し、次の検証で定量も取れる設計にします(KPI/撤退条件も設定します)。
Q3. 失敗したらどうする?
A. 最初から小さく検証し、上限コストと撤退条件を設定します。「致命傷にならない失敗」に設計しています。
Q4. 現場が回らないのでは?
A. 工数見積と役割分担(RACI)を明記し、現場負荷を最小化した検証設計にします。運用に落ちる形まで詰めます。
Q5. 前例がない/うちには早い
A. いきなり本番にしません。前例がないからこそ「試して学ぶ」小さな一歩から始めます。
Q6. 既存商品が売れているのに変える必要ある?
A. “売れている理由”が続く前提が変わっていないか確認します。小さな改善で維持できるなら、それが最適解です。
Q7. 競合も同じことをやっている
A. 生活者の文脈は企業ごとに違います。競合比較より「自社のお客様の状況」を掘り下げ、ズレを削る設計にします。
Q8. そんなのはマーケの理想論では?
A. 理想論にしないために、観察→試作→検証→改善の手順で“再現可能な型”として回します。
Q9. それ、アンケートで十分では?
A. アンケートは有効ですが、平均化で尖りが消えやすい特性があります。迷い・ためらい・代替行動は現場観察で補完します。
Q10. 結局、何を決めればいいの?
A. 「次の検証で何を確かめるか」と「撤退条件」を決めれば前に進めます。今日決めるべき意思決定を明確にします。

6. 部門横断で揉めない“共創型”進め方(合意の取り方)

部門横断で揉めるのは、価値観の違いではなく「見ている情報が違う」ことが多いです。
共創型の進め方は、情報を揃え、決めるべきことを揃え、責任を揃えます。

揉めないための3点セット

  • 共通の事実:観察ログ・学びログを共有(意見ではなく事実)
  • 共通の判断軸:文脈/不安/継続の観点で評価する
  • 共通の役割:誰が決める/誰がやる/誰が支えるを明確に
ここまでの設計が揃うと、次は“場”を作って一気に決めるのが速いです。 その設計が 実践ガイド④(ワークショップ設計) です。

7. 次に読む:共創ワークショップ設計へ(場で決める)

社内合意を「会議で揉める」から「場で決める」に変えると、スピードが上がります。
目的設計・進行台本・質問集・準備チェックを、すぐ使える形でまとめたのが次の記事です。

社内合意が「止まる」状態から抜け出したい方へ

「反対が怖くて前に進めない」「稟議が通らない」「部門間で揉める」など、 現状に合わせて整理し、通る構成安心材料の揃え方を一緒に設計します。

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