特集:リサーチから共創へ テーマ リサーチ → 共創

リサーチから共創へ──調査では見えない“生活者の本音”を掴む

アンケートやインタビューをやっているのに、「売れる理由」が掴めない
数字は集まったのに、社内で「それで結局どうするの?」となる。

それは、調査が悪いのではなく、調査が得意なのは「傾向」であり、企画に必要なのは「文脈(状況・迷い・不安・継続条件)」だからです。
このページでは、従来リサーチの強みを活かしつつ、生活者と“一緒に考える”共創リサーチへ進むための実務視点を整理します。

このページで得られること
・「調査で分かること/分からないこと」が腹落ちする
・共創リサーチで“本音(行動の条件)”を掴むコツが分かる
・企画につながる“問いの立て方”と“進め方”が手順で分かる

1. 従来リサーチ──「答え」を集める調査の強みと限界

アンケートやインタビューは、意思決定の“地図”を描くのに強い手法です。
たとえば「誰に・何が・どれくらい支持されるか」「どんな傾向があるか」を、比較可能な形で把握できます。

ただし、企画が動かない現場で問題になるのは、“傾向”が分かっても“打ち手”が分からないこと。
ここで必要なのは、生活者の言葉よりも、生活者が行動を止める条件です。

例として「価格が高い」と言われたとき、原因は一つではありません。
比較対象が別なのか、価値が伝わっていないのか、失敗が怖いのか。
理由が違えば、打つ手も “値下げ” ではなく、伝え方・体験・導線・保証などに変わります。

2. 「本音」が見えない理由──意見と行動は別物

生活者の“本音”は、必ずしも「正直な言葉」として出てきません。
本音とは多くの場合、行動を左右する条件(迷い・不安・面倒・周囲の目・継続の壁)です。

意見(言葉)は「説明」になりやすい。
行動(現実)は「条件」を教えてくれる。
企画に効くのは、後者の“条件”です。

だからこそ、共創リサーチでは「聞く」だけでなく、観察・体験・試作を挟みます。
体験が入ると、生活者は「良い・悪い」ではなく、何が引っかかったか/どこで迷ったかを語れるようになります。

3. 共創リサーチとは?──“調べる”から“一緒に考える”へ

共創リサーチは、生活者を「調査対象者」として扱うのではなく、発見と改善のパートナーとして迎えるアプローチです。

目的は「正解を当てる」ことではありません。
目的は、失敗の原因になりそうな条件を早期に見つけて削ること。
その結果として、価値が“伝わる・使われる・続く”形に近づきます。

実務的には、次のようなアウトプットにつながります。

  • 買わない理由(不安・手間・失敗・代替)を言語化できる
  • 価値の言い換え(伝わる言葉・比喩・使用シーン)が手に入る
  • 改善ポイントの優先順位(どこから直すべきか)が明確になる
  • 社内合意の材料(撤退条件・判断軸・検証計画)が揃う

4. 比較:アンケ/FGI/モニター/共創の使い分け

「調査を捨てて共創へ」ではなく、目的に合わせて使い分けるのが最適解です。 ここが整理できると、社内でも説明が通りやすくなります。

手法 得意なこと 弱点/注意点
アンケート 傾向・優先度・分布を把握。説得材料にも強い。 “理由”が浅くなりがち。平均化で尖りが消える。
FGI(座談会) 反応の幅、言葉のバリエーション、発想のヒント。 場の空気に影響。建前が混ざりやすい。
モニター体験 使用時の引っかかり、改善点の発見、比較ができる。 “評価”に寄ると本音が取れない。設計が重要。
共創リサーチ 行動条件(迷い・不安)を掴み、改善と企画に落ちる。 問い設計と場づくりが要。やり方次第で散らかる。
おすすめの組み合わせ:
①アンケで傾向を押さえる → ②共創で“理由(条件)”を深掘り → ③最小検証で改善に落とす

5. 実務プロセス:共創リサーチ 5ステップ

ここからが「企画に落ちる」ポイントです。
共創リサーチは、ふわっと話して終わらせず、成果物(アウトプット)を先に決めて設計します。

  1. 1
    問いを絞る(何を“決める”のか)
    「誰の」「どんな状況で」「何が引っかかっているか」を1枚に整理。問いが広いと散らかります。
  2. 2
    仮説を作る(当てにいかない、試すために)
    “買わない理由/続かない理由”を仮説化。改善案も3つ程度に絞る。
  3. 3
    体験を挟む(言葉にならない部分を出す)
    試作品・モック・比較・使用シーン再現など。体験があると“条件”が言語化されます。
  4. 4
    一緒に整理する(原因→打ち手に落とす)
    “事実”と“解釈”を分け、改善優先順位を決める。ここが「企画に落ちる」核です。
  5. 5
    次の検証計画にする(学びを残す)
    「何を変え」「何を測り」「いつ判断するか」を決めて、社内合意までつなげます。

共創リサーチは“良い意見をもらう場”ではありません。
失敗の原因になりそうな条件を見つけて潰す場です。
だからこそ、次の検証(小さく試す)までセットにすると強いです。

よくある質問(FAQ)

共創リサーチを検討する際によく出る質問をまとめました。社内説明の材料としてもご活用ください。

Q1. 共創リサーチは「従来の調査」を置き換えるものですか?

置き換えではなく役割分担です。アンケートは「傾向・優先度」を掴むのが得意で、 共創リサーチは「なぜそうなるか(行動条件)」を掴み、改善と企画に落とすのが得意です。 まずアンケートで全体像→共創で深掘り、が実務では最もスムーズです。

Q2. 何人くらい参加者がいれば十分ですか?

目的次第ですが、共創リサーチは「人数」より「設計」が重要です。初回は 3〜6名程度でも「迷い・不安・代替行動」といった“条件”は十分に掴めます。 その後にアンケートで量的に確かめる、という順番がおすすめです。

Q3. 「本音」を引き出すコツはありますか?

コツは評価を聞かないことです。「良いですか?」より、 「どこで迷いましたか?」「続ける条件は何ですか?」「買わないとしたら何が引っかかりますか?」など 行動の条件を聞きます。さらに、試作品や比較など体験を挟むと、 言葉にならない引っかかりが出やすくなります。

Q4. 共創リサーチの成果物(アウトプット)は何が理想ですか?

「いい意見が出た」ではなく、社内で次が動く形が理想です。たとえば ①買わない理由(不安・面倒・代替)②改善の優先順位③価値の言い換え(伝わる言葉/使用シーン)④次の検証計画 まで揃うと、開発・営業・広報が同じ方向を向きやすくなります。

Q5. 社内で「それって調査として信頼できるの?」と言われたら?

共創リサーチは「統計的に代表する」よりも、失敗要因を早期に潰して企画を前進させるための手法です。 そのため、結論を断定するのではなく「仮説→検証→改善」の流れで説明すると通りやすいです。 どうしても数の根拠が必要な場合は、共創で見えた論点をアンケートで確認する“併用”が有効です。

補足:FAQは必要に応じて増やせます(例:費用感、期間、参加者募集、守秘、BtoBでも可能?など)。

6. 失敗しないコツ:よくある誤解と回避策

誤解①:たくさん聞けば本音が出る

量より設計です。特に「評価」を聞くと建前が増えます。
代わりに状況・行動・迷いを聞くと、本音(条件)が出ます。

誤解②:共創は“いい話”を作るための場

いい話より先に、買わない理由(不安・面倒・代替)を取る。
“不”を取れたとき、初めて“価値”が立ち上がります。

誤解③:議論が盛り上がれば成功

盛り上がりは結果で、成功条件は成果物です。
例:改善優先順位/言い換え案/検証計画/撤退条件 など。
最初に「持ち帰る成果物」を決めると、場が締まります。

チェック:共創の場が散らかるときは、
①問いが広い/②体験がない/③成果物が曖昧 のどれかが原因です。

7. 共創リサーチを理解するための実践記事

「読む→試す→改善する」ために、実践記事を3本に整理しています。
まずは気になるものからどうぞ。

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