生活者の本音を引き出す方法|観察・対話・現場で“ズレない商品企画”に変える

実践ガイド① 本音の引き出し(観察・対話・質問集) 親ページ:総合ガイド

生活者視点の商品企画で一番の分かれ道は、「意見を集める」か「文脈を掴む」かです。
本音は「好き・欲しい」よりも、迷い/ためらい/やめた理由/代替行動に出ます。
ここでは、現場でそのまま使える形で「観察→対話→記録→インサイト化」の手順と質問集をまとめます。


1. 本音が出ない“よくある理由”(相手のせいではない)

  • 言いにくい:本音ほど角が立つので、無難に言い換える
  • 説明できない:行動の理由は本人も言語化できないことが多い
  • 状況が思い出せない:質問が抽象的だと記憶が再生されない
  • 評価される不安:「正解」を答えようとする

ポイント:本音を引き出すコツは、相手を説得することではなく、“思い出せる問い”と“言いやすい場”を用意することです。

2. まず観察:聞く前に“見る”(行動の中に本音がある)

生活者の本音は「意見」よりも、行動の引っかかりに出ます。 まずは、次の観察ポイントを押さえるだけで、企画の論点が一気に具体化します。

迷い

どこで手が止まったか

手に取る→戻す/比較して立ち止まる/棚の前で迷う。ここに「買わない理由」が潜みます。

不安

表情が曇った瞬間

失敗・汚れ・後片付け・家族の反応。言いにくい不安ほど行動に出ます。

面倒

続かない兆候

置き場所/準備/片付け/手入れ。小さな面倒が積み重なると習慣が止まります。

代替

“別のやり方”で済ませる

自作・我慢・別商品・別サービス。競合は同カテゴリだけではありません。

観察のコツ:「当てる」ためではなく「仮説の材料」を集めます。
事実(何が起きたか)を丁寧に残すほど、後工程(仮説→検証)が強くなります。

3. 対話:なぜ?より、その時どうした?(行動再現で深掘りする)

「なぜそう思いましたか?」は、答えが“それっぽい説明”になりがちです。
代わりに行動を時系列で再現してもらうと、本音に近づきます。

基本の型(行動再現) ① その時の状況は?(いつ/どこ/誰と) ② 何をしようとしていましたか? ③ どこで迷いましたか? ④ 何と比べましたか? ⑤ 何が引っかかりましたか? ⑥ 結局どうしましたか?(買う/やめる/先送り) ⑦ 家に帰ってからどうでしたか?(続く/続かない)
聞き方のコツ:答えを急がず、相手の言葉を“そのまま”返す(オウム返し)→少し具体化して聞き直す、が効きます。

4. 質問集:すぐ使える20問(売場/購入前/使用中/継続)

購入前・売場(迷いと比較)

  • 手に取った瞬間、最初に見たのはどこでしたか?
  • 買う前に、どんなことで迷いましたか?
  • その時、他に何と比べましたか?(商品以外も)
  • 買うのをやめたことがあるなら、何が引っかかりましたか?
  • 「これなら買う」と思える条件は何ですか?

使用(最初の体験と失敗の不安)

  • 家に持ち帰って、最初にやったことは何ですか?
  • 使い方で迷ったところはありましたか?
  • 失敗しそうだと感じた瞬間はありましたか?
  • 想像と違った点はありましたか?
  • 「ここが良い」と感じた瞬間はどこでしたか?

継続(続かない理由の特定)

  • 続けるのが難しかった瞬間はありましたか?
  • 面倒だと感じたのは、どの作業ですか?
  • 置き場所・片付け・手入れで困ったことは?
  • 家族や周囲の反応で、使い方が変わったことは?
  • 使わなくなった理由があるなら、何がきっかけでしたか?

代替(競合を広げる)

  • 同じ目的で、他にどんな方法を取っていますか?
  • それ(代替)の良いところは何ですか?
  • それでもこちらを選ぶとしたら、何が決め手になりますか?
  • 人にすすめるなら、どんな条件の人にすすめますか?
  • 逆に、すすめないとしたら、どんな時ですか?

5. 記録:事実と解釈を分ける(これだけで精度が上がる)

本音の収集で成果が分かれるのは記録です。
おすすめは、メモを「事実」と「解釈」の2段に分けること。

記録テンプレ(そのままコピペ可) 【事実】(見た/起きたこと) - どの場面で: - 何が起きた: - どこで迷い: - どう行動した: 【解釈】(仮説) - 迷いの原因は: - 背景の不安/面倒は: - 代替行動が示すことは: 【次の問い】 - 追加で確かめたいこと: - 次回の観察ポイント:
狙い:後で社内説明する時に「それは主観では?」と言われにくくなり、合意形成が進みやすくなります。

6. インサイト化:本音→価値仮説につなげる(言い換えの型)

集めた本音(断片)を、そのまま企画にすると散らばります。
そこで、“行動が起きる条件”として言語化し直します。

言い換え例(本音 → 価値仮説の芽)

  • 本音:「面倒で続かない」→ 仮説:「続けるための面倒を最小化し、習慣に乗せる条件が必要」
  • 本音:「失敗が怖い」→ 仮説:「最初の一歩の不安を消す“失敗しない設計”が必要」
  • 本音:「家族の目が気になる」→ 仮説:「周囲を気にせず使える“場面の設計”が必要」
  • 本音:「結局いつものに戻る」→ 仮説:「代替行動より“ラク”か“安心”が勝つ必要がある」
次のステップ:ここで出た仮説を、小さく試作して確かめるのが「仮説検証プロセス」です。

7. NG例:やるほどズレる聞き方(避けたい3つ)

  • いきなり評価を聞く:「どう思いますか?」→ 建前になりやすい
  • 理想を聞く:「理想の◯◯は?」→ 現実の行動から離れやすい
  • 誘導質問:「◯◯が良いですよね?」→ “正解探し”になる

結論:本音は“意見”ではなく、行動の引っかかりに出ます。
だから「評価」より「再現」、「理想」より「現実」を聞きます。

8. 次に読む:仮説検証プロセスへ(試作→テスト→改善)

本音から仮説が立ったら、次は当てにいかず、確かめにいく段階です。
どの順番で試すか、何を見れば学びが取れるかをテンプレ付きでまとめたのが次の記事です。

生活者の本音から、企画の芯を作りたい方へ

「観察で何を見ればいい?」「質問がうまく作れない」「集めた声をどう仮説にする?」など、 現場の状況に合わせて整理し、次の一手が決まるところまで一緒に設計します。

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