選ばれる理由”を共に育てる-コモディティ化の対策としての価値共創

最終更新日:2026.01.15

この記事は価値共創マーケティングの全体像(基本・ポイント・導入法)で紹介しているテーマの一部を掘り下げた内容です。実務で使えるコツや事例を中心に解説します。

コモディティ化が進むほど、企業は「違い」を作ろうとして機能追加値下げに走りがちです。
しかし生活者側では、選択肢が増えすぎて「比較疲れ」が起き、最後は“無難なもの”に流れたり、“いつもの”に戻ったりします。
ここで必要なのは、商品そのものの差ではなく、選ばれる理由(意味・納得・関係性)を顧客と一緒に育てるという発想です。

✅ 結論:コモディティ化の対策は「差」ではなく「理由」を育てること

  • コモディティ化=“どれでもいい”状態。比較軸が価格に寄りやすく、利益もブランドも削られる。
  • 価値共創は「文脈(使われ方)」と「関係性」を育て、模倣されにくい“選ばれる理由”をつくる。
  • 成功の鍵は共創の場を設計し、声を可視化し、商品・体験・発信に反映すること。

はじめに:モノがあふれる時代に、何を選ぶのか?

スーパーには似たようなドレッシングが何十種類も並び、ネット検索をすれば、同じような機能を持つ製品が無数に出てきます。 選べるのは便利なはずなのに、逆に選ぶことがつらくなる――そんな体験はありませんか?

この状態が、いわゆるコモディティ化です。機能・品質・価格の差が縮まり、生活者から見ると「どれを選んでも同じ」になってしまう。 企業側は差別化しようとするほど模倣され、最後は価格競争へ――という消耗戦に入りやすくなります。

コモディティ化の本質とリスク

コモディティ化は「似てきた」という現象に見えますが、本質は生活者の判断材料が“機能と価格”に収束してしまうことです。 そこには構造的な問題が潜んでいます。

① 製品中心主義の限界

企業が「良い」と思う改善が、生活者の「必要」とズレると、差別化は空回りします。

  • 追加機能が増えるほど、選びにくい
  • 魅力が説明依存になり、伝わりにくい

② 模倣スピードの加速

技術・情報の拡散が早く、優位性が短命化。差はすぐに追いつかれます。

  • 機能やデザインは真似されやすい
  • 「似た商品」が増えるほど価格へ

③ 価格競争の消耗戦

違いが伝わらないと、比較は値段に寄ります。結果、利益も投資余力も削られます。

  • 利益率の低下
  • ブランドの希薄化
  • ロイヤルティの低下
重要: コモディティ化の怖さは、売上の問題だけではありません。
“選ばれる理由が言語化できない”状態になると、次の新商品も同じ罠にハマります。

「価値共創」という逆転の発想

ここで有効なのが、企業が一方的に価値を“提供する”のではなく、顧客や生活者とともに価値そのものをつくるという 価値共創(Co-creation of Value)の考え方です。

なぜ共創がコモディティ化に効くのか?

模倣されにくい「文脈」

商品そのものより、使われる場面・背景・関係性が価値になると、簡単に真似されません。

  • 誰と、どんな対話で作ったか
  • どんな場面で役立つかの具体性

“声”がイノベーションになる

現場の「困りごと」「不便」「違和感」は、改善の種であり、新しい価値の起点です。

  • 机上の仮説よりも精度が高い
  • ズレを早期に修正できる

🤝 心理的ロイヤルティが育つ

共に創った体験は、単なる満足を超えて、共感応援へつながります。
結果として「価格ではなく意味で選ぶ」状態が生まれ、コモディティ化の外へ出やすくなります。

共創によって生まれた“独自化”の実例

事例:地元農家と連携したスナックの開発

ある菓子メーカーは、地元農家と「旬の素材を活かしたお菓子を共に作る」プロジェクトを始動しました。 農家のこだわりや苦労、地域の文脈を商品に織り込むことで、単なる“おいしいスナック”ではなく、 “地域との絆を味わう”価値が生まれました。

生産者農家を訪問し、共創の素材開発について対話している様子
▲ 生産者の現場を訪問し、素材の魅力や背景を直接ヒアリング。ここで得た“文脈”が、選ばれる理由になります。

生産者の言葉や表情、畑の風景まで五感で感じることで、開発チームは「商品に込める意味」を見直しました。
こうした共創ストーリーは、都市部のファンの心を動かし、価格競争とは別次元の意味の価値を提供します。

そして重要なのは、これが大企業ではなく中小規模のメーカーでも実現できている点です。
現場の声にすぐ耳を傾け、意思決定を早く回せる中小企業だからこそ、柔軟な共創が強みになります。

コモディティ化の時代に「選ばれる理由」をつくる3つのポイント

① 顧客を“パートナー”として捉える(調べる→一緒に考える)

「顧客のニーズを調べる」だけだと、結局は“企業が解釈した結論”になりがちです。
共創では、顧客をリサーチ対象ではなくプロジェクトの仲間として関わってもらい、 解釈のズレをその場で整えていきます。

② 共創の場を“仕組み”として設計する(偶然にしない)

共創は「やる気」だけでは続きません。場・頻度・役割・アウトプットを決めて、運用できる形に落とします。

チェック

  • 誰とやるか(ユーザー像・人数・選び方)を決めている
  • 何を決める場か(コンセプト/体験/パッケージ等)が明確
  • 頻度と所要時間が現実的(小さく回せる)
  • 議事録・学びを残し、次に活かす仕組みがある

③ 声やアイデアを“可視化して活かす”(反映→発信まで)

参加者が「自分の声が活かされた」と実感すると、共創者としての誇りが生まれます。
その結果、口コミ・紹介・応援が起き、「選ばれる理由」が強く育ちます。

可視化の例

  • “声→企画”の変化をBefore/Afterで見せる
  • 試作の変遷(A→B→C)を共有する
  • 生活者コメントを、店頭・EC・SNSで活用

やりがちな失敗

  • 声を集めたが、反映が曖昧
  • 結果だけ発信し、プロセスが見えない
  • 社内だけで止まり、外に出ない

実践: “選ばれる理由”を共に育てる5ステップ

最後に、現場で回しやすい形に落とした手順です。まずは小さく始めてOKです。

1現場の「違和感」を集める

顧客の不満だけでなく、使い方の工夫・迷い・比較の理由など“文脈”を拾います。

2生活シーンで意味を言語化する

機能ではなく「どんな場面で、何が楽になるか/嬉しいか」を言葉にします。

3共創セッションで解釈を整える

ズレをその場で修正し、“選ばれる理由”の核を共同で作ります。

4試作・試験で“理由”を強くする

小さく試して改善し、言い切れる魅力(納得)に育てます。

5プロセスごと発信して共感を増やす

完成品だけでなく、声が活きたプロセスを伝えることで模倣困難性が上がります。

ポイント: 共創の成果は「新商品」だけではありません。
“選ばれる理由が社内で共有される”こと自体が、次の企画を強くします。

まとめ:コモディティを超えて、「意味のある選択肢」を共に育てよう

市場に似た商品があふれ、価格が競争軸になりやすい今、企業が取るべきは 「一方的な売り込み」ではなく、顧客と一緒に選ばれる理由を育てることです。

価値共創は、生活者との関係性を通じて“文脈のある商品”を育て、模倣されにくい独自性を作ります。
そしてそれは、価格ではなく意味で選ばれる状態を生み出します。

“選ばれる理由”を、顧客と一緒に育てていく――その一歩が、企業の未来を変えていきます。

FAQ:よくある質問

Q. 共創は大企業向けの取り組みではありませんか?

A. いいえ。むしろ中小企業は意思決定が早く、現場に近い分、共創を回しやすい強みがあります。小さな人数・小さな検証から始めるのが効果的です。

Q. 何から始めれば良いですか?

A. まずは「顧客が迷うポイント(比較の理由)」と「現場の違和感」を集め、生活シーンに落とした言語化をします。その後、少人数の対話で解釈を整えるのが近道です。

Q. 値下げ以外の打ち手が見つかりません。

A. 値下げが効くのは短期です。共創で“選ばれる理由”を言語化し、プロセスと一緒に伝えると、意味で選ばれやすくなり、価格競争から抜けやすくなります。

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