マーケティング1.0から4.0までと今求められる「共創型戦略」
企業が顧客とどのように関わり、どのように価値を提供するか──その考え方や手法は、時代の変化とともに大きく進化してきました。大量生産・大量消費の時代から、感情や信頼をベースにした「共創」へと向かうマーケティング。その背景には、情報技術の発展と生活者意識の変化があります。
この記事では、マーケティング1.0〜4.0の変遷を図解とともに解説し、「共創マーケティング」がなぜ今求められているのかを明らかにします。
■ マーケティングの進化:1.0〜4.0の比較
マーケティングの歴史は、大きく4つの段階に分けて捉えることができます。それぞれの時代において、中心となる価値観や消費者との関係性が変化してきました。

図1:マーケティング1.0〜4.0の進化と視点の違い
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マーケティング1.0: 製品中心。「4P」で売る仕組みを設計
企業の関心は主に製品(Product)に集中しており、いかに大量生産された商品を効率よく売るかが焦点でした。
代表的な戦略フレームワークとして「4P」(製品・価格・流通・販促)が重視され、企業主導・一方向のマーケティングが主流でした。 -
マーケティング2.0: 消費者志向。「STP」や「CRM」でニーズに対応
市場が成熟しモノが溢れる時代になると、消費者の嗜好は多様化。企業は「誰に、どんな価値を、どう届けるか」を明確にする必要に迫られました。
STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)戦略により市場を細分化し、CRMで個別のニーズにも対応する顧客中心のマーケティングへと移行しました。 -
マーケティング3.0: 価値主導。共感や社会貢献へのシフト
消費者は、単なるモノやサービスだけでなく、その背後にある企業の理念・社会的責任・パーパスに共感する時代へ。
「いい商品」よりも「意味のある商品」「共感できる企業」が選ばれるようになり、マーケティングは“感情”や“信頼”を含む「価値の物語」を重視するようになります。 -
マーケティング4.0: 自己実現と共創。信頼・参加・共感がカギ
ソーシャルメディアの台頭により、消費者が自ら情報を発信・共有する時代へ。企業は情報の支配者ではなく、共創のパートナーとしての立場が求められます。
顧客との「対話」や「参加型開発」を通じて、共感を呼び、自己実現の支援を行うブランドが評価される。マーケティングは一方的なアプローチから、双方向で価値を育てる活動へと進化しています。
■ AISASモデル:検索と共有の時代へ
従来の「AIDMAモデル」では、広告などで認知され、購入に至る流れが中心でした。しかし今や、消費者は「検索し、共有する」存在となり、情報収集・発信の主導権を握っています。

図2:AISASモデル ─ 消費者が検索し共有する時代
具体的には以下の5つのステップから構成されます:
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Attention: 注目される
消費者が商品やサービスに「気づく」瞬間。テレビCMやSNS投稿、看板広告などによって視覚的・聴覚的に接触し、「存在を知る」フェーズです。 -
Interest: 興味を持つ
興味や関心が高まり、「もっと知りたい」と思う段階。商品名や特徴、価格などの情報が消費者の心に引っかかると、このフェーズに移行します。 -
Search: 自ら調べる
インターネット検索やレビューサイト、SNSなどを使って積極的に情報収集を行う段階。企業発信だけでなく、他のユーザーの声や評判が意思決定に大きな影響を与えます。 -
Action: 行動する(購入)
調査結果や比較をもとに、実際に購入や申込といった行動に移る段階。オンラインショップでの購入や店舗訪問など、様々なチャネルで「決断」が行われます。 -
Share: SNS等で共有する
実際に体験した感想や満足度を、SNSや口コミサイトを通じて他人と共有する段階。他者の意思決定にも影響を与えるため、マーケティングにおける「拡散力」の源泉になります。
この流れにより、企業の「一方通行の広告」は限界を迎え、生活者との対話が必要不可欠になりました。
■ 共創マーケティング:企業と生活者が“ともに創る”時代へ
マーケティング4.0では、企業が商品を「提供する存在」ではなく、顧客とともに価値を「共創する存在」へと変化しています。この考え方が「共創マーケティング」です。

図3:共創マーケティングの循環構造 ─ 顧客と企業の共進化
共創マーケティングでは、以下のような変化が起きています:
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消費者が開発段階から参加:
共創マーケティングでは、企業が企画・開発する前段階から消費者を巻き込みます。
アンケートやモニターにとどまらず、アイデア提供・プロトタイプ評価・デザイン提案など、商品の“共創者”として参加することで、ニーズに合致した商品やサービスの実現が可能になります。 -
企業は“売る”から“聴く”へ:
従来のマーケティングは「伝える」ことが中心でしたが、共創ではまず「聴く」ことが重視されます。
顧客の声に真摯に耳を傾けることで、ニーズの深層を掘り起こし、商品開発やサービス改善に活かす姿勢が求められます。 -
ブランドは「共感」と「信頼」で選ばれる:
価格や機能だけでなく、「そのブランドの価値観に共感できるか」「信頼できる企業か」が選ばれる基準になっています。
顧客と対話を重ねることで、人間味あるブランドとして認識され、長期的なファンとの関係を構築できます。 -
LTV(顧客生涯価値)が大幅に向上:
顧客との関係性を深め、継続的なロイヤルティを生むことで、単発の売上ではなく“生涯を通じた価値(LTV)”が高まります。
購入頻度やリピート率の向上だけでなく、口コミ・レビュー・共創への協力といった非金銭的な価値も含めて、ブランドにとっての利益が拡大します。
SNSやオンラインプラットフォームの活用により、顧客の声をすぐに商品企画に反映できる時代。結果として顧客ロイヤリティを高め、共感を軸としたブランド形成が進んでいます。
■ まとめ:マーケティングは「対話と共創」の時代へ
マーケティングは、1.0の「製品中心」から4.0の「共創・自己実現」へと進化しました。今後の企業に求められるのは、顧客と継続的な対話を重ねながら、信頼と共感のうえにブランドを築いていくことです。
「顧客を動かす」から「顧客と動く」へ。 企業と生活者が共に価値を創り上げていく“共創マーケティング”は、未来の成長戦略の鍵となるはずです。