価値共創マーケティング 実践ガイド
第3章 本音は「聞かれる」より「出ちゃう」—場の設計
「本音を聞き出したい」と思うほど、質問を増やしたくなります。
でも実は、本音は質問の上手さよりも、安心できる空気で出やすくなります。
この章では、初めての方でも実践できるように、本音が出る“場”のつくり方を
具体例と手順で丁寧に説明します。
最初に:本音は「質問」より「条件」で出る
まず、いちばん大事な考え方を共有します。
本音は「引き出すもの」というより、条件が整うと自然に出てしまうものです。
この章の結論(やさしい言い方)
本音は、質問で“取りにいく”より、
安心できる場で“出ちゃう”ようにするほうが確実です。
たとえば、同じ人でも——
会議だと黙っていたのに、帰り道やカフェでは急に熱弁する。そんな経験はありませんか。
これは、その人の性格が変わったのではなく、話せる条件が変わっただけです。
この章で目指すこと
すごい質問力を身につけるのではなく、
本音が出る“条件”をつくれる人になること。
それが、価値共創の土台になります。
なぜ本音は出にくいのか(3つのブレーキ)
本音が出ないのは「相手が協力的じゃないから」ではありません。
多くの場合、人の中には無意識のブレーキがかかっています。
とくにBtoCの「暮らしの話」は、本人にとって当たり前すぎて言語化しにくいことが多いです。
だからこそ、質問を増やすより先に、ブレーキが外れる条件を整える必要があります。
ここで起きがちな誤解
本音が出ないと「質問が悪い」「聞き方が下手」と思いがちですが、
実は多くの場合、問題は質問より“空気”と“関係性”にあります。
本音が出る場の“3つの要素”(安心・余白・対等)
本音が出る場には共通点があります。難しいことではありません。
キーワードは、安心・余白・対等です。
① 安心(守られている)
- 否定されない
- 正解を求められない
- 話さない自由もある
安心があると、言葉が出てきます。
② 余白(急がされない)
- 沈黙が許される
- 思い出す時間がある
- 結論を急がない
余白があると、つぶやきが出ます。
③ 対等(同じ目線)
- 上下関係を作らない
- 教えるより一緒に考える
- “検査”ではなく“対話”
対等だと、遠慮が減ります。
具体のイメージ
「インタビュー」より「雑談に近い対話」。
「調査」より「一緒に振り返る時間」。
それが“場の設計”の方向性です。
場づくりの型:90分でも10分でもできる「基本の流れ」
ここからは実践編です。
「場の設計」と聞くと難しそうですが、やることはシンプルです。
下の5ステップを守るだけで、本音の出やすさがぐっと変わります。
最初に“約束”を置く(安心)
例:「正解はありません」「否定しません」「話せないことは話さなくてOK」。
これを最初に言うだけで、空気が変わります。
“場面”から入る(思い出しやすい)
いきなり「なぜ?」を聞かず、「そのとき、どんな状況でした?」から始めます。
例:「いつ」「どこで」「誰と」「何をしている最中でしたか?」
“迷い”を丁寧に扱う(本音の入口)
例:「迷った点は?」「やめようと思った瞬間は?」
迷いの近くに、決め手のヒントがあります。
“つぶやき”を拾って、そのまま返す(対等)
相手の言葉を要約しすぎず、「いまの言葉、いいですね」と受け取って返します。
例:「“失敗したくない”が大きかったんですね」
最後に“確認”だけして終える(余白)
結論を出そうとせず、「今日出てきたのはこの3つですね」と整理して終わります。
人は帰り道に思い出します。余白を残すと、次の本音が出てきます。
時間がない場合(10分版)
10分しかなくても、①約束 → ②場面 → ③迷いの3つだけでOKです。
ここを押さえると、本音の出やすさは一気に上がります。
やりがちな失敗と、簡単な直し方
場づくりは「小さなズレ」で崩れます。でも、直し方もシンプルです。
ここでは、よくある失敗をすぐ直せる形でまとめます。
失敗①:いきなり「なぜ買ったの?」と聞く
直し方:「そのとき、どんな状況だった?」と“場面”から入る。
失敗②:沈黙が怖くて、質問を連打する
直し方:沈黙は“思い出し時間”。5秒待ってから「そのとき何が気になった?」と一言。
失敗③:答えを“正しく”まとめようとする
直し方:要約しすぎず、相手の言葉をそのまま返す(「今の“〜”が大事ですね」)。
失敗④:最後に結論を出して終わろうとする
直し方:結論ではなく“見えたことのメモ”で終える(「今日は3つ出ました」)。
ひとこと
本音を増やすコツは、質問の数ではなく、相手の安心が増える行動を増やすことです。
今日からできる:1人でもできる“場の設計”ミニ練習
「いきなり人に話を聞くのはハードルが高い」という方もいます。
そこで、まずは1人でできる練習を紹介します。これは意外と効きます。
“買う場面”を1つだけ選ぶ
例:初回購入/リピート/他社と迷ったとき、など。
その場面の「前→最中→後」を書く
「前:何に困った?」「最中:何で迷った?」「後:何に安心した?」
“つぶやき”を10個だけ書く
例:「失敗したくない」「続かなかったら嫌だ」「家族に笑われたくない」など。
うまく書こうとせず、短い言葉でOKです。
この練習の狙い
本音は「理由」より「場面」に宿ります。
先に場面の構造を作っておくと、実際の対話で“拾うべき言葉”が見えてきます。
次章へのつながり:本音の「証拠」は観察にある
場が整うと、本音が出やすくなります。
ただし、本音は言葉だけではありません。人は、言葉と同じくらい行動でも語っています。
次章予告
次の第4章では、観察で見える「買う理由」を扱います。
「何を見て迷うのか」「どこで手が止まるのか」——行動の中にあるヒントから、仮説をつくる方法を説明します。
要点まとめ(3行)
- 本音は「質問で引き出す」より、条件が整うと出ちゃうもの。
- 本音が出る場の鍵は、安心・余白・対等の3要素。
- 基本の型(約束→場面→迷い→つぶやき→確認)を守ると、再現性が上がる。
次の一歩
現場に合う“回る型”を、短時間で整理します
章の内容を踏まえて「どこから始めるのが最短か」を一緒に整理します。 まずは気軽にどうぞ。
※ご相談後に無理な営業は行いません。