こらぼたうんでは、企業と生活者(消費者)が一緒に未来の価値を共に考える「共創セッション」を数多く行ってきました。
その中で、イノベーションにつながる発想を生み出すための大切なプロセスとして、「拡散」と「収束」のフェーズを意識的に切り分けることが重要だと実感しています。
特に、まだ方向性が定まっていない「拡散」のフェーズでは、早まって収束させてしまわない“勇気”が問われます。 アイデアの芽が自由に育つ時間を確保しない限り、本質的な革新は生まれにくいのです。
■ 拡散と収束──創造の螺旋を回すプロセス
共創セッションでは、「アイデアの拡散(ダイバージェンス)」と「アイデアの収束(コンバージェンス)」を意図的に繰り返しながら、発想を深めていきます。
- 拡散: 既存の枠にとらわれず、あらゆる方向に自由にアイデアを広げるフェーズ
- 収束: 出てきたアイデア群を整理し、方向性や実現性を絞り込むフェーズ
この二つのフェーズは相互補完の関係にありますが、拡散を十分に行わずに収束に入ってしまうと、凡庸で無難なアイデアにとどまり、イノベーションは起こりません。
■ アイデアが“拡がる”瞬間を奪わない
拡散フェーズでは、時に現実味のない発言や突飛なアイデアが飛び出します。 しかし、そうした「非常識」にこそ、既存の延長線上にはない突破口が隠れているものです。
ここで注意すべきなのが、企業の担当者が無意識のうちに発してしまう「収束発言」です。
- 「それはこれまでやったことがないので…」
- 「技術的に難しいですね」
- 「予算が合いません」
- 「方向性が見えないので絞りましょう」
これらはすべて、無意識の「収束モード」への突入です。
しかし本来、拡散フェーズは自由に広げることが目的であり、「方向性が定まらない」「実現性が怪しい」というのは当然のことなのです。
■ 「無理そうでも拡げる」ことがイノベーションの源
斬新なアイデアは、実現性の裏付けがないところから生まれるものです。
最初から論理的・合理的である必要はありません。むしろ、それを求めすぎると、今までと変わらない結論に落ち着いてしまうのです。
「無理そうな条件は今は考えない」
「予算や技術の話は収束フェーズまで取っておく」
こうした割り切りが、拡散の質と幅を大きく左右します。
現実的な制約に目を向けるのは後で十分。その前に、まだ誰も想像していなかった未来に一歩踏み出すことが大切です。
■ 拡散フェーズで“我慢する力”が求められる理由
「何となくまとまらない状態」が長く続くと、どうしても焦りが出てきます。 収束させたくなる気持ちも自然ですが、ここでの我慢が肝心です。
共創セッションに参加する企業側にとって、「すぐに形にしたい」「現実的な案を絞りたい」という欲求は常にあります。 しかし、それを抑えて“混沌に耐える時間”こそが、創造の本質なのです。
拡散フェーズは“未完成の宝庫”。
その価値を知る企業こそが、新しい価値を創造できる存在です。
■ 最後に:拡散フェーズでの勇気が未来を変える
共創の現場では、まず広げる。そして時間をかけて選ぶというプロセスが必要です。 拡げた先にこそ、真に新しい価値のヒントがあります。
まだ荒削りでもいい。未熟でもいい。
重要なのは「今はまだ形になっていない」アイデアを、その場で切り捨てないことです。
「収束させない勇気」。それは、共創セッションにおける最も価値ある姿勢のひとつです。
本当にイノベーションを起こしたいと願うのであれば、この拡散フェーズを大切に扱ってください。
アイデアは“収束させずに耐える”ことで、はじめて未来への扉を開くのです。