従来・ファン・共創/3つのマーケティングの違いとは?

私たちが企業のマーケティング支援を行う中で、よくいただくご質問のひとつがこれです:

従来のマーケティングとファンマーケティング、そして価値共創マーケティングは何がどう違うのですか?

たしかに、これら3つのアプローチは似ているようで根本的な考え方が異なります。そこで今回は、比較しやすいように以下の表にまとめてご説明します。

 

従来・ファン・共創マーケティングの違い
従来のマーケティング ファンマーケティング 共創マーケティング
企業主導で広告を打ち、情報を一方的に届ける ファンが自発的に口コミやSNS投稿で広める 企業と生活者が一緒に意味ある体験・価値を創る
購買促進のためのキャンペーンや割引中心 ファン同士の使用感や活用アイデアが自然に広がる 顧客のインサイトをもとにニーズを共に探索する
企業の視点で商品やサービスを企画・開発 ファンの声を一部参考にすることもある 初期構想から顧客と共に考え、試し、創り上げる
成果指標は売上・認知度などの数値 エンゲージメントやSNS波及が主な評価軸 共感度、共創プロセス、組織変容など多面的に評価
顧客は「ターゲット」や「購買者」 顧客は「応援者」や「愛用者」 顧客は「パートナー」や「共創者」
関係は売って終わりの短期的なもの 共感を軸にした中長期の関係性 共に育てる循環型・参加型の関係性

 

この表から見えてくる本質的な違いとは?

表から読み取れる大きな違いは、「誰が主導しているのか」「どのような関係性を築こうとしているのか」という点です。

従来型マーケティングでは、企業が情報発信の主導権を持ち、顧客はそのメッセージを受け取る存在です。主語は企業であり、顧客は“対象”として扱われがちです。

一方、ファンマーケティングでは、顧客が“応援者”として商品やブランドの魅力を周囲に広めてくれます。企業と顧客の距離は縮まりますが、依然として発信のタイミングやテーマは企業が管理している場合も多くあります。

そして共創マーケティングでは、企業と生活者が同じテーブルで意見を交わし、初期の構想段階から一緒に「価値づくり」に取り組む関係が築かれます。ここでは、顧客は単なる“応援者”ではなく、ブランドづくりの共同パートナーです。

この違いは、単にマーケティング手法の比較にとどまりません。企業文化の変革や事業の持続性、顧客との信頼関係の構築に直結する重要な視点です。

共創マーケティングが目指すもの

このように見ると、共創マーケティングは単に「広める手段」を変えるだけでなく、企業と顧客の関係性そのものを変えるアプローチだとわかります。

従来のマーケティングでは、企業が作った価値を「どう売るか」「どう伝えるか」が重視されてきました。しかし、生活者の価値観が多様化し、情報があふれる現代においては、「誰が伝えるか」「どのように共感されるか」が問われています。

共創マーケティングは、こうした時代の変化に応えるアプローチです。生活者の声を“聞く”のではなく、“一緒に考える”ことから始まり、アイデアの発想、開発プロセス、改善の仕組みに至るまでをパートナーとして共に進めていきます。

このプロセスを通じて、企業と顧客の間には、単なる「取引関係」ではない、感情的なつながり=共感関係が育まれていきます。商品やサービスを提供するだけでなく、「なぜそれをつくるのか」「どういう想いで社会に届けるのか」という物語が共有されることで、ブランドに対する愛着や信頼が深まっていくのです。

一過性のキャンペーンで注目を集めるのではなく、対話と協働を積み重ねながら“共に育てる”ブランド。それが、共創マーケティングが目指す姿です。

特に中小企業や地域ブランド、スタートアップなど、資源が限られる組織にとっては、顧客との共創が最大の強みになります。広告費をかけずとも、共感と参加を軸にした関係性が育てば、自然な拡散と支持が得られるからです。

もし今、「ファンはいるが、次の一手が見えない」「もっとお客様と深くつながりたい」と感じているのであれば、“何を届けるか”の前に、“誰と、なぜ創るのか”を見直すことが重要です。そこにこそ、共創型マーケティングの真価があります。

「伝える」から「一緒に育てる」へ──
マーケティングの未来は、共創のなかにあります。

共創事例|こらぼたうん
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