
戦争は可愛そう
僕は夏になると、子供のころ父から聞かされたこの話を思
昭和20年の夏。鹿児島の農村部にある国民学校4年生で
この日もそうだった。プロペラの音が聞こえたので飼育小
いつもは、そのまま空高く通り過ぎる戦闘機だがこの日は
機首を下げ、操縦士の影が見えたかと思うといきなり機銃
ところが次の瞬間、機体から黒い塊が落ちてきた。爆弾で
爆風で飛ばされた。
すべてが真っ白に見え、左足が焼けるように熱かった。
爆弾の破片がふくらはぎを貫通し、膝から下は血に染まり
幸いその後は、歩行にまったく影響はなく不自由なく生活
僕はいつか母になるであろう小学生の娘にもこの話をした
黙って聞いていた娘は、涙をこらえていたが大粒の涙が落
帰りの車の中でお気に入りのCDに合わせご機嫌に歌って
「戦争っていやだね。こわいよね」
娘は歌うのを止めちょっと考えてから
「戦争ってかわいそう」と答えた。
「そうだね。戦争はかわいそうだね」僕は頷いた。
まだ娘には少し早いかなと思ったけど、この話をして良か
子供の頃、僕がこの傷を見るたびに父はこの話をした。そ
「俺ら」って必ず言った。自分だけじゃなくて「俺ら」。